済生会総研News Vol.112

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済生会総研の視点・論点 済生会総研 所長 炭谷 茂
第111回 済生会基本構造改革論(6)~なぜ今、済生会基本構造改革か?~

 8月25日、第1回「済生会基本構造改革検討会」が開催され、済生会基本構造改革の本格的な検討が始まった。済生会内外の医療・福祉分野の専門家13名から構成され、委員長には三角隆彦横浜市東部病院院長が互選された。
 最初に各委員から検討会の進め方等に発言がなされた。この中で「なぜ今、基本構造改革をしなければならないのか。済生会は、従来90周年、100周年、110周年と10周年の節目に基本問題検討会を設置して済生会のあり方を見直してきたという歴史がある」という質問が投げられた。
 多くの済生会関係者が感じている疑問である。「鬼面、人を威す」という言葉の類ではないかと考える人もいるだろう。そこでこの疑問に明確に回答することが、出発点になる。
 次の10周年は、120周年の2031年(令和13年)であるが、現在の状況は、これを待っておれない緊急性、重大性がある。済生会の基本構造まで踏み込んだ改革が必要で「第2の創業」と言える。100年に1度の改革であると位置づけることもできる。この重大な時期を適切に対処すれば、済生会は大きく飛躍する。もし放置し、誤れば、衰退の道へ一瀉千里である。
 その理由は、医療・福祉・介護を巡る環境の歴史的な激変である。超高齢社会や人口減少社会の進行、地方からの人口流出、日本経済の衰退、急速な情報社会の進展、社会的排除や孤立化の激化などは、これまで経験したことのない世界である。
 これに対して高市政権は、先ごろの骨太の方針2026で「強い経済」の実現を目指して17の戦略分野に集中投資を行う方針を発表した。医療や福祉分野では新しい地域医療構想や地域包括ケアの推進でこの変化に対応しようとする。
 済生会は、「済生会基本構造改革」の実行で対処できると確信している。一例を挙げれば、これまで済生会は、各病院、施設の独立採算制を取ってきた。これは現場の状況を的確に掴み、効率的効果的な経営を可能とする経営形態である。今後もこの経営形態を堅持しつつ、医薬品・医療介護材料の購入、外国人雇用、治験など幅広い分野で共同事業を各段に拡大することによって済生会の事業執行力や財務力の強靭化を図ることができる。

研究部門 済生会総研 上席研究員 原田 奈津子

北海道済生会の共生フェス視察とソーシャルインクルージョンシンポジウム参加報告

 今回、ソーシャルインクルージョンに関するインタビュー調査のため、小樽市に向かった。インタビュー調査以外にも北海道済生会の共生フェスの視察と済生会ソーシャルインクルージョンシンポジウムにも参加した。今回はフェスの視察とシンポジウム参加について報告したい。
 小樽くらしたい共生フェスは、地域住民が「小樽で暮らしたい」と感じることができるイベントとして北海道済生会主催によりウイングベイ小樽で行われており、今年は9月6日に実施された。共生フェスは多岐にわたっており、地域の中学生や高校生の吹奏楽の演奏会などの文化芸術フェアや、モルックの体験会や大会などの参加型のメニューも用意されていた。介護予防フェアとして、VR体験や介護予防体操などのブースもあった。さらに、済生会小樽病院による健康フェアとして、血圧や骨密度の測定や健康相談なども行っていた。マルシェとして、農作物やお菓子に加え、Saiseiクリエーターズショップのグッズ販売も行われており、多くの人でにぎわっていた。会場であるウイングベイ小樽の小樽ベイシティ開発をはじめ、小樽市、小樽市社会福祉協議会なども共催になっており、キャッチコピーにもなっている「未来のくらしたい」を体現するフェスとなっていた。
 今回は、イベントの一環として、済生会ソーシャルインクルージョンシンポジウムが開催された。北海道済生会の近藤真章支部長の主催者挨拶、小樽市の迫俊哉市長の来賓挨拶に続き、炭谷理事長の「ソーシャルインクルージョンの理念を活かす」と題した基調講演があり、諸外国での社会的課題の解決に向けたソーシャルインクルージョンの理念の登場や日本での取り組みの現在、さらに済生会のソーシャルインクルージョンのまちづくり推進への寄与について話がなされた。
 元厚生労働省職業安定局障害者雇用対策課長の小野寺徳子氏のとした特別講演「誰もが役割を持ち、参加できる社会の実現に向けて」では、障害者雇用の現状や方向性を示すだけではなく、高齢者やひきこもりの方など働きづらさを抱える人も含めた、誰にでも出番と居場所がある地域づくりについて事例をまじえた講話となった。
 「地域共生社会を支えるソーシャルインクルージョンの実装―制度と実践、そして“参加できる場”をどうつなぐか―」と題したパネルディスカッションでは、北海道済生会の櫛引久丸常務理事がコーディネーターとなり、さらに松原了理事がコメンテーターとして登壇した。パネリストとして、小樽市福祉保険部長の中村哲也氏、北海道済生会事業共創推進室主任の土谷浩大氏、済生会小樽病院内科部長の諸原基貴氏、株式会社小樽ベイシティ開発の代表取締役社長の内藤雄介氏がそれぞれの取り組みに関する報告を行った。地域の課題や今後に向けての取り組みの話もあった。
 小樽市における誰もが健やかに生きがいを持って安心して暮らし続けられるまちづくりの実現としてウェルネスタウン構想があるのが重要であると感じた。大型商業施設に保健所や相談窓口などの公的機能が所在し、さらに北海道済生会による児童発達支援事業・放課後等デイサービスなどの事業も行われており、アクセスしやすい環境になっていた。連携の強みを感じる一日であった。

―編集後記―

 先日、北海道済生会でのインタビュー調査を中心に、その他、済生会S.I.コンソーシアム会議やS.I.シンポジウムの参加や共生フェスの視察などのため、小樽へ出張してきました。まちの様子を見せていただく中で、斜面地が多く、特に冬の雪による生活への影響など多くの学びがありました。写真は、途中の展望台で撮った1枚です。AIの生成画像を超える神秘的な夕刻の日の沈む様子に驚きました。日本は本当に幅広い景色や暮らしが存在していると感じました。(Harada)

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