済生会総研News Vol.110

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済生会総研の視点・論点 済生会総研 所長 炭谷 茂
第109回 済生会基本構造改革論(4)~済生会の理念の再確認~

 組織は、それぞれ理念を持つ。この理念を達成するために事業を展開している。理念なき組織は、社会において有益な使命を果たすことはできない。理念を忘れた組織は、早晩社会から退場を余儀なくされる。
 済生会の理念は、明治44年に明治天皇の済生勅語に掲げられた「施薬救療」である。これは当時の日本の社会情勢から誕生した理念である。
 当時世界的不況が日本を襲い、明治維新以降近代化・工業化が進んだ日本では多数の失業者が発生した。一方農村では冷害が発生し、多くの農家が生活に困窮し、日本全体が社会不安に覆われた暗い時代であった。
 国民の栄養状態が全般的に劣悪だったうえ、結核、チフス、赤痢等の感染症が蔓延したが、ほんの一部の大企業を除いて医療保障制度は、存在しなかった。このため適切な医療を受けられず命を失う人が少なくなかった。
 この状況に対処するために無料で医療―サービスを提供する済生会が創設されたのである。
 それから115年の歳月が流れた。今では国民の生活水準は向上し、皆保険制度や所得保障制度が整備された結果、当時のような社会問題はほとんどなくなった。それでは済生会の使命はなくなったのだろうか。
 「施薬救療」の理念は、生活困窮者を取り残すことなく、支援の手を差し伸べて社会で尊厳が維持された生活を送ることができるように支援することである。その内容は、時代の変遷とともに変化する。太平洋戦争終結後の混乱期、高度経済成長期、オイルショック後の低成長期、バブル経済期とそれぞれの時代において異なった生活困窮者問題が存在した。
 それでは現在はどうか。結論を急げば、我々が経験したことのないような解決困難な問題をたくさん抱えている。増加する認知症高齢者のる医療・介護、家族も苦しめる難病患者問題、進まない精神障害・発達障害等の社会参加、社会からの排除が進む寄せ場、被差別部落、元受刑者、ホームレス、一方で社会から孤立する引きこもりの人、一人暮らしの高齢者など問題が山積している。
 これらの問題に敢然と立ち向かうことが、「施薬救療」の理念の発露である。
 これらの課題は、今や人類共通の社会課題である。これに挑戦することによって済生会は、この解決策を世界に示すことができる有利な立場に立っている。

研究部門 済生会総研 上席研究員 原田 奈津子

若者支援の現在

 昨年の総研News vol.99にて、令和7年版厚生労働白書にて、「次世代の主役となる若者の皆さんへー変化する社会における社会保障・労働施策の役割を知るー」と特集が組まれていることを記した。白書では、若者が社会保障や労働施策を知ることの意義を提示し、どのようなライフプランを持つのか、またトラブルに巻き込まれた時の解決など、主体的に生活するという視点を強調しているような内容が目立った。また、地域社会の一員として、社会へのかかわり方についても触れており、事例などから、身近に考えられるような構成になっていた。当事者意識を持つことへの期待が込められていたようであった。

出典 令和7年版厚生労働白書〔概要〕厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/001524055.pdf

 7月4・5日に鉄道弘済会の第62回社会福祉セミナーがオンラインで行われ、筆者も聴講したが、そこでのテーマが「これからの若者支援」というものであった。登壇者は研究者だけでなく、NPO法人などの実践者からの報告がなされた。若者それぞれが抱える生きづらさや孤立などの現状、若者支援の施策の変遷、支援者のかかわり方などさまざまな角度からの議論も興味深いものであった。
 また、「居場所づくり」という言葉が多く出てきたが、若者に対して、単なる保護すべき存在や支援の受け手ということだけではなく、先の白書にもあったように、当事者としてともに創るという視点での寄り添い方が求められているということを感じた。

―編集後記―

 猛暑日はもちろんそれ以上に酷暑日を警戒する日々です。いつも以上に建物や電車のクーラーのきいたところから、地上に出るとクラクラしてしまいます。昨年以上に男女問わず日傘を差している方が増えている気がします。
 この時期恒例の甲子園に向けた地方大会が行われていたのでテレビで観ていたら、暑さで大変そうでした。炎天下、タイブレークまでもつれ込んでいる緊迫した試合では、ふらついたり、足がつったりと選手も極限まで力を出し切ろうとしていて、ハラハラしながら見入ってしまいました。今年はどんな夏になるでしょうか。(Harada)

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