済生会総研News Vol.108
医療政策や福祉政策の考察には、地域政策との関連が不可欠である。しかし、関係行政当局からの発信は、あまり目にしない。発表されている研究論文を概観しても、十分な状況とは言えない。
医療や福祉、介護は、住民の健康や生活の維持に必須の要素である。これらのニーズが満たせず不安になった住民は、安心できる地域へ転出する。このように行動する住民が累積すると、当該地域は、消滅に向けて一瀉千里である。このような現実が、日本の各地で発生しつつある。
厚労省の調査によれば、無医地区数は、令和4年(2022)で 557になっている。無医地区の定義は、医療機関がなく半径4キロ圏内に50人以上居住し、容易に医療機関を利用できない(公共交通で片道1時間以上要するなど)地区である。
また、市町村単位でも開業医を含め医療機関がない市町村は、令和4年(2022)で77あったが、2040 年には約2割の342市町村になると予測されている。
誰でも故郷や住み慣れた土地に愛着がある。多くの人は、できれば生涯、その土地で暮らしたいと考えているだろう。しかし、それが許されなくなったのが、日本の現実である。ヨーロッパの地方を旅行すると、それぞれの地域で自然環境と文化を大切にしながら、豊かな暮らしをしている様子に接するが、日本が進行している状況は、正しいとは思えない。
私は、日本で過疎化現象がうねりのように起こり始めた昭和 40 年代後期に旧自治省で過疎対策の仕事に従事した。当時高度経済成長によって都市と地方の経済格差が拡大した結果である。しかし、有効な政策手段がなかなか打たれなかった。
今、必要なことは、これらの失敗を教訓に従来の発想を転換させて、地域が活性化する方策を講じ、実行することである。何よりも重要なことは、医療、福祉、介護の提供体制を整備し、住民の不安を一掃することである。これさえあれば、働く場を創設することは、今日の産業構造の変化から難しいことではない。まさに病院等が地域の興廃の鍵を握っている。
このためにも済生会は、基本構造改革を早急に実行し、地域の期待に応えていきたい。
研究部門 済生会総研 上席研究員 原田 奈津子
社会保障審議会(福祉部会)の資料からみる政策動向
前号にて今年度の研究計画を提示したが、【重点課題】として、済生会が地域の医療・福祉の中核的役割を担うための済生会基本構造改革の取組みに関する研究を進めている。2040年に向けての制度や政策に関する動きとして、社会保障審議会において、どのようなことがトピックとして取り上げられているのかをおさえておく必要がある。今回はその動向に着目して取り上げたい。
直近の2026 年4月23日に開催された第33回社会保障審議会福祉部会の資料をみると、人口構造の変化や多様なニーズに対応するため、地域の状況に応じた包括的な支援体制の拡充や福祉人材の安定的な確保・定着支援が課題とされている。地域共生社会のさらなる展開に向けても、市町村ごとの取り組みが重視されていることがわかる。
出典:第33回社会保障審議会福祉部会 資料より https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_72812.html
さらに、多様な課題の解決に向けて、福祉分野だけでなく、多様な分野との連携に関する事項を地域福祉(支援)計画に記載するなど、地域での協働のあり方が問われていることがわかる。
また、地域において、平時だけでなく、災害に備えた連携のあり方も大きな課題となっている。誰も取り残されることなく地域で支えあうにはどのような社会を目指すのか、地域共生社会をどのように実現し、深化していくのかが、重要になってくる。
済生会においても、ソーシャルインクルージョンの推進をそれぞれの地域ですすめており、各地の支部・施設が地域での連携やまちづくりにもかかわってきている。地域で果たす役割や機能について、具体的に検証しつつ、今後の実践への波及効果を意識した研究を進めていきたいと思う。
出典:第33回社会保障審議会福祉部会 資料より https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_72812.html
―編集後記―
5 月に入り、あっという間に夏を感じるようになりました。スコールのような雷雨や30度を超える気温など、梅雨をスキップしたかのような気候になっています。
半袖にハーフパンツといった夏の装いの方も見かけるようになりましたが、まだ長袖を着用している人の方が多い気がします。この時期、電車や建物の中は、クーラーが効きすぎている場合もあるからでしょうか。
先日、気象庁が最高気温が40℃以上となる日を「酷暑日」と呼ぶと決めましたが、どのくらいその新用語が飛び交うようになるのか、今から心配です。 (Harada)
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