研究員紹介Staff
所長メッセージ
炭谷 茂
医療と福祉を囲む環境は、激変している。
人口減少、少子超高齢社会、地球環境の危機、デジタル社会、グローバル化、国家財政の逼迫、社会的責任意識を欠く企業、地方の衰退、拡大する所得格差、社会的排除・孤立化等々、私が関心を持つキーワードを羅列するだけでも、日本の医療や福祉を巡る環境は、戦後以降最大の変化に直面している。
さらに今年に入り、新型コロナウイルスの猛威が加わった。世界は1929年の世界恐慌に匹敵する激震で、国際政治、経済、社会、文化などあらゆる分野に多大な影響を及ぼしている。医療や福祉の分野もこれから逃れられない。
このような空前絶後の厳しい環境下で医療と福祉を担う日本最大の非営利民間団体である済生会の使命は、むしろ増大している。
本会は、国や自治体からの赤字補填のための財政援助はなく、経営の安定化が絶対条件である。増大する崇高な使命を果たしながら、経営バランスを取るという狭隘な道を歩いていかなければならない。
済生会総研の役割は、この道を明快に具体的で示すことである。しかし、実務に埋没した研究は、場当たり的で、将来への理想と展望を欠く。第3者への説得力が乏しい。理論のみでは机上の空論、畳の上の水練に終わる。
本研究所は、従来から理論と実務の橋渡しの役割を担ってきたが、歴史的な激変を見せる現下の情勢は、この観点を改めて確認することが必要である。
所長代理メッセージ
松原 了
肝臓、胆道膵臓の外科医師としての10年間、臨床研究はしていましたが、その後(当時)厚生省に勤務しましたので、北里大学衛生学で相澤教授指導の下、肺がんと塵肺、喫煙の関係で博士論文を書いて以来、研究らしい研究歴はありません。官僚としての長い経験から、論理的思考は身に着けたつもりです。医学生物学では研究とは、それまでにない新しい知見を見つけるものと思っていました。
今回あらためて「研究」について調べたところ、研究とは「ある特定の物事について、人間の知識を集めて考察し、実験、観察、調査などを通して、その物事についての事実を深く追求する一連の過程である」との説明が最もしっくりしました。新たな視点は必要ですが、新しい発見のような結果は敢えて問わないという事のようです。
特に人文科学や社会科学においては、自然科学のような輪郭のはっきりした結果が出るとは限りません。あるテーマについて、多角的な面から複数の研究者が考察し、議論を深めて行く過程やそれら足跡の集積も広い意味での成果であると言うことだと思います。
総研の大きなテーマである連携、包括、経営というくくりの中で、職員の皆様が日々仕事をしている中で抱く疑問を解き明かしたい人、解決につながる道に近づきたいと思う人は是非研究に参加して欲しい。
総研は探求心を持った人々の知的活動のプラットホームとして活用してもらいたい。総研スタッフの研究だけではなく、様々の好奇心や関心を抱く済生会職員はどんな形であれ参加可能です。
研究部門
人材開発部門
総研人材開発部門では、「済生会人材確保・育成対策大綱」に掲げられた指針に沿いながら、本会職員のあるべき姿「済生会人像」を目指して人材育成を進めています。
令和元年度は、医師臨床研修関連、職種別マネジメント、看護分野、社会福祉・地域包括ケア分野等、計24コースの研修を実施しています(新型コロナウィルスの影響で延期等したものを含みます)。
令和2年度からは、総研、各ブロック・支部・施設等の研修主体が同じ方針・体系で人材育成が行えるよう、令和2年2月に「済生会人材育成計画」を策定しました。これから各施設等の研修担当者・職能団体等と協議・調整を進め、法人としての人材育成を進めていくこととしています。