済生会総研News Vol.90

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済生会総研の視点・論点 済生会総研 所長 炭谷 茂
第89回 介護保険制度の将来像(10)

 本稿では現行の介護保険制度について介護保険料、介護保険の被保険者の範囲、介護サービス内容の3分野にわたって問題点が存することを述べてきた。
 87回からは、これらの問題点を克服し、安定した信頼できる介護保険制度とするため、どのように改革すべきかについて考えている。
 まず財政基盤の強化について取り上げてきた。現行の介護保険制度は、発足時から財政構造に不安を抱えての船出だったので、私は、早晩、行き詰ると主張してきた。
 そのため介護保険制度の財政基盤の安定化を図るための3つの選択肢が考えられる。前回は一つ目として「保険制度」から税を財源とする一般事業に転換することを述べた。これは介護保険創設時の議論に戻ることになるが、5兆円に上る保険料収入に代わる財源を見つけることは、現実論としている困難である。「介護保険制度」を推進した関係者は、「介護保険」へのこだわりが強いだろう。
 第2の選択肢として考えられる案は、介護事業を2分割することである。
 これは前回述べたオランダの2015年の医療介護改革が参考になる。1968年、世界で最初に介護保険制度を導入したオランダは、日本と同様に給付費が増大し、財政問題の解決が余儀なくされた。その後2006年、2015年と改革を実行してきた。
 2015年の医療介護改革では、2014年まで介護保険の根拠法である「特別医療費補償法」は次のとおり4分割され(「SOMPO福祉財団叢書No97」による)、介護保険法の役割を限定している。
 介護保険法に基づく入所介護
 健康保険法に基づくホームナーシングケア
 社会支援法に基づくソーシャルケア・社会支援
 青少年法に基づく子どもに対する予防・メンタルヘルス
 そこで日本においても介護保険を分割し、給付対象は、施設入所と在宅介護に絞り、他の家事援助、地域支援事業、福祉用具貸与事業等は一般財源で賄う市町村事業に2分割する。
 財源構成の大枠を維持したままであるので、収入を施設入所等に限定して充当すれば、給付改善を図ることができる。
 しかし、介護保険の機能の縮小となり、被保険者が同じ額の保険料が変わらなければ、国民の合意を得ることは困難であろう。今回の総選挙では政党の中で現役世代の負担軽減を掲げた政党が多いが、それに応えることができない。

人材開発部門 看護室 室長 樋口 幸子

看護管理者育成研修~看護室のあゆみ~

 済生会本部看護室の設置について遡ると平成24年8月に発刊された「全国済生会看護部長会のあゆみ」から昭和49年(1974年)に事業部内に看護室が新設されたことがわかりました。同年6月に第1代の看護室長が着任され、その時から数えて今の私で10代目となります。
 看護室の設置は、「済生会の看護の質の向上と全看護職員の連帯の絆の強化を目指し、そのために研修を発足し指導・教育する」ことを目的としていました。この内容は、済生会の組織分掌規程に定められていることと一致しています。
 看護室が創設された初期のころは、病院所属の看護師のみならず准看護師の教育や訪問看護ステーションの看護師、福祉系に配属されている看護職員、看護専門学校看護教員に対しても研修が開催されていたようです。平成15年7月まで看護室長が地域ケア対策室長を兼務していましたが8月からは、社会福祉課に地域包括ケア課が設置されたことで看護室のみの担当となり、研修もほぼ病院看護職員中心の研修に変化しました。
 今年で看護室は本部に設置されて以来50年目を迎えています。病院中心の医療から地域との連携を強化するような医療提供体制に変わりつつあります。特に病院と在宅を繋ぐ訪問看護ステーションの役割は、益々重要となっていると思います。その役割に携わっている職員の知識技術の向上に看護室が寄与できればと思います。
 看護室は、直近では病院所属の看護職員のみを対象とした研修開催でしたが昨年度から訪問看護ステーションの看護職員研修や済生会の看護要員であれば誰でも参加できるような研修構築をしてきました。済生会本部開催の集合研修は、施設の壁を越え、多施設との看護職員との繋がりが持てる唯一の研修と思います。患者、利用者のみならず地域住民の健康の保持増進に関係する済生会の看護・介護に携わる職員の領域を超えた関係づくりができることと受講されるひとり一人が職場で還元でき自己成長にもつながることができるような研修をこれからも提供できるよう努力していきたいと思います。

―編集後記―

 11月前半は暖かい気候が続き、電車や街で見かける人々の服装も、厚手のコートを着ている人はおらず、朝夕はトレンチコートを羽織っている方が目に付く感じでした。なかには、タンクトップの方や半袖の方もいるというバリエーションにとんだ服装を目にした珍しい時期だったように思います。後半に入り、ようやく冬の気配を感じられるようになってきました。
 さて、この時期の週末に電車でよく見かけるのは受験生らしき子どもとその家族です。先日も志望校について意思確認している親子の姿がありました。悔いのないように過ごしてほしいなと思います。
 今月の写真は、カラーチェンジした東京タワーです。いつもより写真を撮っている人が多いので、私もつられて撮ってみました。調べてみると、東京タワークリスマスライトアップだそうです。
(Harada)

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