済生会総研News Vol.14
先日、総務省が発表した今年1月1日時点の人口動態調査には、医療や福祉を始め日本の経済・社会の分析に当たって重要なポイントがたくさんある。
まず人口が9年連続して減少したことである。減少幅は、37万人で昭和43年に調査を開始して以来、最大である。特に生産年齢人口(15歳~64歳)は、初めて6割を切り、経済成長や地域社会の維持に暗い影を投げかけた。
地域格差の拡大にも注意が向く。大半の道府県が減少した一方、首都圏と愛知県の人口が増加した。市町村単位では人口減少幅が大きくなり、高齢化率が高く、存立自体が危ういところもある。
外国人人口が過去最多の250万人と、前年比7.5%と高い伸びになったことは、歴史的な構造変化だ。外国人が日本の労働力不足を補完しているが、今後とも増加していく。
均一性を重視してきた日本社会で外国人は、異質な存在とされてきた。今後日本社会の受け入れ方が課題である。LGBT、障害者などマイノリティも同様である。
先ごろお茶の水女子大学が2020年度から女性のトランジェンダーを受け入れると発表したが、日本社会ではLGBTへの取り組みが始まっている。
私は、5年前に大阪の会合で初めてセクシュアルマイノリティの人に会ったのを切っ掛けに、LGBT問題の勉強を始めた。昨年6月に東京都の浅草公会堂で企業に勤務する約700人を対象にLGBT問題の研修会を主催した。先進的な取り組みをしている日本IBMの責任者の説明は、有益だった。
一部の企業では外国人、LGBT、障害者などマイノリティ問題に積極的に取り組んでいるが、日本社会全体に拡大しなければならない。
歴史的に考察すると、社会は、マイノリティに対して差別、偏見、排除、無関心の態度を取る。これを改善するため「多文化主義」がイギリス、カナダ、オーストラリアなどで主唱された。マイノリティの言語、習慣、ライフスタイル、宗教などの文化を尊重する考えで、教育、福祉などの政策に導入された。
「多文化主義」に対しては、文化ごとに人や地域を分割させ(例えば異文化のマチを形成)、社会統合を危うくするなどの批判が絶えない。私は、国家として共通の基盤を形成しながら、この上に多文化を育んでいくのが現実的解決方法だと思っている。
いずれにしろ済生会総研の研究対象である医療と福祉は、今やマイノリティ問題から離れることはできない。この分野の日本の研究は、欧米に比べ、相当に遅れを取っているので、格段の努力が求められる。
研究部門 済生会総研 上席研究員 持田 勇治
研究の進捗状況
「DPCデータの利活用を目指した効果的な分析方法の開発と展開」の研究について報告いたします。
1.研究の目的と方法
済生会本部経営管理システムには済生会病院から、年間約40万入院分のDPCデータが集められています。これらのデータは、すべて標準化され分析が可能なものです。
現在の病院は診療サービスの質が求められており、それらを評価する指標が重要になっていると考えました。診療サービスの質の向上を目的として、済生会本部経営管理システムの平成28年度(平成28年4月~平成29年3月)のデータを使用して済生会病院間でベンチマーク可能な指標(12指標)を作成しました。今回取り上げた12の指標は、本来実施すべきものに対して、実施された割合が明確になる指標としました。DPC請求病院とデータ提出病院の退院患者が対象になります。すでにこの結果は済生会のなでしこネットワークにアップされ、本会内で情報共有をしています。
項目は、次の関連の指標を作成です。
(1)手術麻酔関連 4項目
手術麻酔に関連する指標は、麻酔を行った際の管理(褥瘡ハイリスク患者ケア加算・麻酔管理料(2指標)の実施)と周術期口腔ケアの実施についての4つの指標としました。
(2)薬剤関連 2項目
薬剤に関連する指標は、入院中、退院時の薬剤管理についての2つの指標としました。
(3)リハビリ関連 2項目
リハビリに関連する指標は、入院中にリハビリを行った患者に対しての総合計画評価や退院時のリハビリテーション指導料の実施についての2つの指標としました。
(4)その他 4項目
2.結果
各指標での病院間の指標の違いの原因は、様々であると考えられます。
結果が「実施していない」場合でも、実施されなかったり、実施していても算定していなかったりなど、様々なケースがあることが推測されます。また、病院の人員配置や施設規模、病院内での運用方法、関係するスタッフの意識が算定率に大きく影響していると考えます。
これらの算定率が上がることにより、本来の目的である診療サービスの向上につながるとともに、経済的な効果を産み出すと考えます。各病院がこれらの指標から自院の位置づけを理解していただき、病院内での改善活動のきっかけとして活用いただきたいと考えています。
3.今後の計画
平成29年度(平成29年4月~平成30年3月)のデータ作成を進めるとともに、各指標での取り組みが優れている病院からその取り組みをヒアリングして、済生会内での情報共有を行い済生会全体でこれらの指標を引き上げていくことが今後の計画です。
人材開発部門
第40回全国済生会臨床研修指導医のためのワークショップ
第40回全国済生会臨床研修指導医のためのワークショップ(通称:SWS)が、6月23~24日に大阪市(クロス・ウェーブ梅田)で開催され、18病院32名の指導医に厚生労働省認定の修了証が授与されました。この研修は厚生労働省が定める指導医講習会の認定を受けており、届け出済みの16時間に渡るプログラムを確実に実施する必要があります。第1回(平成18年)からの修了者は1,236名に達しました。
持ち回りによる開催担当病院は山口総合病院で、城甲啓治院長とチーフタスクフォースの船﨑俊一川口総合病院循環器内科部長を中心に、6名のタスクフォースの先生方、山口総合病院のスタッフをはじめ、次回担当の前橋病院、次々回担当の二日市病院からも協力を得て、総勢30名のスタッフによって恙なく終了することができました。
主なテーマは研修医が行う研修プログラムの立案で、目標の設定、研修方法(方略)、コーチング、リーダーシップ、評価といった指導に必要な要素について、KJ法を活用したグループワーク、ロールプレイやバズセッションといった手法を用いて効果的に進められました。中央病院の高木誠院長、京都大学の小西靖彦教授による講演も盛り込まれました。
受講者の振り返りの中で、研修医を導くことの難しさを実感した、目標設定とフィードバックがモチベーションを保つのに有益である、方略、コーチングの仕方が最もためになった、これまで自分がしてきた指導法を反省し改善出来ると思った、といった声が多く寄せられ、臨床研修医指導のレベルアップに大きく寄与したワークショップとなりました。
平成30年度第1回アドバンス・マネジメント研修Ⅳ
次世代の看護管理者を目指す中堅看護師を対象にした平成30年度第1回アドバンス・マネジメント研修Ⅳを7月9~11日、64施設から71人の参加を得て本部で開催しました。
1日目は炭谷茂理事長の「看護に関する済生会原論-済生会人として知っておいてほしいこと」、加藤看護師社労士事務所・加藤明子氏の「労働法に基づく労務管理」の講義を行いました。
2日目午前中は関東学院大学大学院看護学研究科委員長・教授・金井Pak雅子氏に「より輝ける看護師を目指して」と題して、次期管理者として期待される中堅看護師の役割やマネジメントについて具体的な事例を交えて語っていただきました。午後はグループワーク形式で、高輪心理臨床研究所主宰・岸良範氏による「人間関係とリーダーシップ-互いに育てあう職場を目指して-」と題した、主にパワーハラスメントについての講義を行ないました。
3日目は引き続き、岸 良範氏の講義と演習で、「イメージを聴く」をテーマに音楽を聴き、「同じ曲を聴いても、同じ文章を読んでも、人によって感じ方が違うこと、違っていてもいいこと」などを学びましだ。午後は11グループに分かれて話し合い、情報交換も行ないました。最後に講師から、「話し合うこと、わかり合うことは、今までに自分の中になかったもの、互いの関係の中になかったものを生み出す、創造的な体験である」との話があり、大変有意義な研修となった。
当研修会の第2回目は、8月22日~24日に同プログラムで開催する予定です。
副看護部長研修会
平成30年度副看護部長研修を7月18日~20日、61病院68人の参加を得て本部で開催しました。1日目は、炭谷茂理事長の「看護に関する済生会原論~済生会人として知っておいて欲しいこと~」の講演、続いて〈大阪〉済生会中津病院看護部長・今西裕子氏が「看護部長のマネジメント」と題して講義しました。講義の内容は中津病院の概要と看護部の紹介と「看護師確保と定着」について3年間取り組んだことと、経営視点を持って関わった「看護部の病床管理」についてでした。
2日目の午前中は、中京大学法科大学院教授・稲葉一人氏の「看護管理と臨床倫理 事例検討会 意思決定支援 院内で実現するために」の講義がありました。実際の症例をもとに、医療倫理の4原則と4分割法(症例検討シート)の活用を解説しました。
この4分割法を活用すると、職種や職場によって倫理の問題の見え方の違いを理解することができます。看護管理者は臨床倫理の視点を生かし、患者家族対応をしていくことが必要です。続いて「臨床倫理の基礎」の説明がありました。倫理学の概要と分類を、例を挙げて分かりやすく解説。言葉を使って考え、臨床倫理を院内で議論することは、医療者の不安を支え、「法的リスク」を軽減させる。対話の場を作ることで、院内での情報の共有を促す。さらに、ルールを作るプロセスで関係者を巻き込む。事例を通じて「臨床の慣例」に気づき、その意味を再度考えるきっかけになる。そして、なにが患者にとって最善の利益であるかを考えることで、医療の重要な一部であり、患者家族の満足や納得につながるとき「医療者の満足(やりがい)」つながる、という講義が行われました。午後には本会理事・岩手医科大学看護学部長教授・嶋森好子氏の「医療安全~医療現場で患者の安全は確保されているか~」の講義がありました。過去にあった医療事故は看護師が気づいた事例が多い。看護管理者として、事故報告の集計データにアンテナを張り、知っておくことが必要である。事故が起きた薬剤名・単位は最新情報を収集し、病院職員に周知し、教育していくことが大切である。こうした教育は、医療事故の予防へと繋がる。さらに、看護管理者が、医療スタッフが働きやすい環境を整え、働きがいを高めるよう「雇用の質」を向上させていく取り組みを進めていけば、「医療の質」の向上へとつながるという講義がありました。続いて本部看護室長の進行で、「私が思う明るい看護部」のテーマでワールドカフェを行いました。自己紹介と意見交換の場となりました。
い)」つながる、という講義が行われました。午後には本会理事・岩手医科大学看護学部長教授・嶋森好子氏の「医療安全~医療現場で患者の安全は確保されているか~」の講義がありました。過去にあった医療事故は看護師が気づいた事例が多い。看護管理者として、事故報告の集計データにアンテナを張り、知っておくことが必要である。事故が起きた薬剤名・単位は最新情報を収集し、病院職員に周知し、教育していくことが大切である。こうした教育は、医療事故の予防へと繋がる。さらに、看護管理者が、医療スタッフが働きやすい環境を整え、働きがいを高めるよう「雇用の質」を向上させていく取り組みを進めていけば、「医療の質」の向上へとつながるという講義がありました。続いて本部看護室長の進行で、「私が思う明るい看護部」のテーマでワールドカフェを行いました。自己紹介と意見交換の場となりました。
3日目の午前中は、本部看護室長よりフォローアップ研修の導入の説明がありました。今年度のテーマは「実践に強い副看護部長は何ができるか」。グループリーダーの発表後、グループ作りを行い、グループに分かれてグループワークをおこないました。午後からは、前年度の「副看護部長フォローアップ研修成果発表」を済生会下関総合病院副看護部長・亀永百合子氏、看護部長・藤田恵氏よりありました。この取り組み事例の講義から学び、再度各グループでテーマを絞り込み、11月に開催の副看護部長研修2回目(フォローアップ研修)に向けてグループワークが行われました。3日目の午前中は、本部看護室長よりフォローアップ研修の導入の説明がありました。今年度のテーマは「実践に強い副看護部長は何ができるか」。グループリーダーの発表後、グループ作りを行い、グループに分かれてグループワークをおこないました。午後からは、前年度の「副看護部長フォローアップ研修成果発表」を済生会下関総合病院副看護部長・亀永百合子氏、看護部長・藤田恵氏よりありました。この取り組み事例の講義から学び、再度各グループでテーマを絞り込み、11月に開催の副看護部長研修2回目(フォローアップ研修)に向けてグループワークが行われました。
済生会総研から
携帯電話の機能は、日進月歩進化しています。
本来の機能である電話機のみではなく、インターネット端末として、メールを発信する機能として、新聞代わりとして、子供の居場所を確認する機能等、多岐にわたっての機能を備えています。
このような便利になった携帯電話なので、本来は直接お会いして話すべき事を携帯電話やメールで済ませてしまうこともあるのではないでしょうか?正直なところ少々寂しさも覚えます。これらの機能を活用する一方で 可能な限り顔を合わせて伝えることを大切にしていければと思います。

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