済生会総研News Vol.102

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済生会総研の視点・論点 済生会総研 所長 炭谷 茂
第101回 外国人問題考察の視座(5)~排外主義との一線~

 大都会の街路では外国人観光客の方が多数を占める。物を食べながら歩き、容器を道端にポンと捨て去る外国人もいる。交通量の多いにもかかわらず、道を塞いで記念撮影に夢中になる一団もいる。
 マンションなど活用したインバウンド旅行者向けの民泊数は、2018年に認められたが、今では3万5千を超える。民泊の利用者が、深夜まで騒いで近所の住民が眠れない、ごみ収集日でない日に大量のごみを出す、屋外で喫煙し、灰皿替わりに使ったプラスチック容器を放置し、火事が心配だ、他人の宅地内に日常的に立ち入るので、犯罪発生も心配だなどと批判が出ている。
 外国人観光客は、2024年が3,687万人だったが、日中関係の雲行きが危うくなってきたが、今年は超える勢いである。これに伴い住民とのトラブルは、急増していくだろう。
 在留外国人も増加している。2025年6月末で395万人になり、2022年以来年率10%のペースで増加している。人口に占める外国人比率は、3.2%である。日本の労働力状況等に照らすと、今後増加を辿っていくだろう。
 私は、5%の時代は、遠くないと推測するが、欧米のように10%を超えるかは、慎重な見方をする。というのは、イギリスで居住経験では外国人にとってイギリスは、言語や仕事の内容等から働き易く住みやすい。一方日本は、短期滞在であればともかく、長期に滞在して暮らし、働くには、言語、仕事、住宅、地域社会などの現状では不向きである。
 自治体の中には北海道占冠村(しむかっぷむら)36.6%、赤井川村35.3%、群馬県大泉村21.3%(いずれも2025年1月現在)のように外国人比率が、高くなっているところがあるが、地域住民との摩擦が生じていると伝えられる。
 すでに外国人の比率が高いヨーロッパ諸国では、近年移民の受入れ拒否や出身国への送還という動きが出ている。国民の声を取り入れた極右政党が各国で議席の延ばし、政治に大きな影響力を及ぼすようになった。移民に寛容だったドイツが象徴的だが、ドイツでの世論調査では政治の優先課題は、移民・難民がトップになっている(公共放送ARD調査)。これを受け極右政党「ドイツのための選択肢」が躍進を続けている。危機感を感じたメルツ政権もシリア難民の国外追放など外国人政策の方向転換を始めている。
 日本でも高市政権は、外国人政策に関する関係閣僚会議を設けて検討を始めた。総理は、「排外主義とは一線を画して」施策の検討をするとしているが、方向を誤ると、次第に排外主義へと誘導しかねない。これを防ぐには外国人との共生のあり方も合わせて提示すべきではないだろうか。

人材開発部門 総研 人材開発部門 上席企画員 鈴木 孝尚

済生会地域包括連携士の法人外での養成による効果についての調査研究

 済生会では、本会独自の取り組みとして、本会の理念や特徴を生かした地域包括ケアを推進する役割を担う「済生会地域包括ケア連携士(以下、連携士)」を2016年より養成してきた(連携士の概要については、済生会総研News vol.89を参照)。連携士を養成する研修では、eラーニングとオンライン、対面での研修を組み合わせて実施し、対面での研修では地域課題の把握や把握した課題の解決について検討するグループワークに力を入れている。幅広い視点から、医療・福祉のみならず、住まい・就労・教育といった周辺領域を含めた地域ニーズについて議論し、解決方法もアウトリーチや新たな資源開発・ネットワーク構築など幅広く議論することで、インクルーシブ社会の実現に向けた地域課題の把握やその解決策を検討している。

 地域包括ケアの推進には、他法人も含め同じ視点で取り組む必要があることから、2024年度より法人外に向けた連携士の養成を開始。加えて、同じ地域で働く法人内外の職員が同時に受講できるよう都道府県支部による研修開催も始め、2024年度は北海道支部と栃木県支部で実現することができた。同じ地域の法人内外の関係者が一緒に受講する研修となった。都道府県支部での研修開催では、グループワークでの地域課題の検討についても同じ地域の受講者同士で行うことができるため、研修修了後には普段の業務でも連携強化が図られ、その地域の支援の質向上に貢献できた。加えて、把握された地域ニーズを基に自身の法人での新規事業展開のヒントになることや、連携士同士で定期的な勉強会が開かれたことで新たなネットワーク構築にもつながった。

 こうした流れの中、法人外の職員に対し法人独自の人材養成研修をすることで、法人の理念や特徴を生かした取り組みが地域への展開等にどのような効果があったかを、法人外の受講者へのインタビュー調査により明らかにする研究を実施することになる。すでに法人外の受講者がいる北海道支部と栃木県支部に協力してもらい、法人外の受講者へのインタビュー調査を実施する予定。調査の実施に当たっては、受講者が集まりやすいよう、すでに連携士の資格を取得した人を対象としたフォローアップ研修を支部で開催する際に、インタビュー調査を実施することとした。

 調査方法は、半構造化面接によるグループインタビュー調査とし、質問項目については事前に済生会総研倫理委員会での承認を得たうえで実施。研修による学習の効果や、研修受講後の行動・意識の変化、多職種・多機関との連携や地域包括ケアの推進への影響等について調査する予定。今後、インタビュー調査およびデータの分析を行うことで、地域共生社会やインクルーシブな社会の実現に向けた済生会らしさのある地域包括ケアの推進に貢献したい。

研究部門 済生会総研 研究部門長 山口 直人

令和4年度医療・福祉の質の確保・向上等に関する指標の公表

 本報告書は、令和4年度における済生会の各医療施設・福祉施設の診療内容を、主に過程(プロセス)と結果(アウトカム)の視点から指標として集計したものです。済生会の設立の趣旨に鑑みて評価すべき独自の指標(例えば、公費負担医療患者の割合や連携の状況など)も設定しています。
 本報告書で明らかなように、各指標において施設間にばらつきがあります。しかしながら、これは単純に質の良い・悪いを反映しているものではありません。これらの指標は各施設の置かれた立地条件や受け入れ患者の重症度などによって変わります。重要なことはこうした指標の差がどのような要因に拠っているのかを、結果としてのデータから各施設が検討し、そして改善すべきものは改善していくというPDCAサイクルが恒常的に機能することが重要です。ご覧いただく際は、この点に御留意いただきますようお願いいたします。
 公表が、他団体における類似事業とともに我が国の医療の質向上に寄与することを期待しています

済生会総研ホームページ 臨床評価指標
https://soken.saiseikai.or.jp/clinical_indicator/

―編集後記―

 11月はハロウィンとクリスマスに挟まれて、街の明かりや装飾の転換がみられる時期となっています。街のあちこちでそのキラキラした景色に人が集まっているのをみかけます。
 職場近くの東京タワーでも、時折、特別なライトアップがあります。写真は、星条旗カラーになったとある日のライトアップです。
 観光客だけでなく、道行く人が皆、写真を撮っていました。本格的なカメラを構えている方もみられました。気づいたら私もひさびさにスマホを握りしめていました。 (Harada)

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