済生会総研News Vol.101
外国人に対する社会保障のあり方について先の参議院選挙で一部の政党から外国人の生活保護の適用除外が公約として発表された。これに接した人は、現行生活保護法が外国人に適用になっていると誤解した人もいただろう。しかし現行法は、外国人に適用されない。諸外国の多くも同様の規定になっている。
したがって日本人が外国で生活困窮になったとき、たいがいの場合滞在国の生活保護法が適用されないので、日本人の保護は、現地の日本領事館が行うのが国際法のルールである。
しかし、日本の生活保護制度では、歴史的な理由や国際人権条約、難民条約等にかんがみ、昭和29年5月8日の厚生省社会局長通知に基づき一部の外国人に対して生活保護法を準用し、行政措置として生活保護が給付されている。その対象者は次のとおりである。
①出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)別表第2の在留資格を有する者 (永住者、定住者、永住者の配偶者等、日本人の配偶者等)
②日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の特別永住者 (在日韓国人、在日朝鮮人、在日台湾人)
③入管法上の認定難民
行政措置であるので、法律に基づく生活保護とは権利性について性格的に異なっており、上記の局長通知では次のように述べられている。
「生活に困窮する外国人は、法を準用した措置により利益を受けるのであるが、権利としてこれらの保護等の措置を請求することはできない。日本国民の場合には、法による保護等を法律上の権利として保障しているのであるから、保護等を受ける権利が侵害された場合にはこれを排除する途(不服申立の制度)が開かれているのであるが、外国人の場合には不服の申立をすることはできないわけである。」
行政措置の適用を受けている外国人の状況に関する厚労省の資料では、世帯主が日本国籍を有さない世帯に属する被保護人員数を調査している。2014年度は74,386人であったが、2023年度は65,683人と減少傾向にある。日本全体の被保護人員数はそれぞれの年度が216.6万人、202.1万人であったので、外国人世帯主の世帯の被保護人員数の占める割合は、それぞれ3.43%、3.25%となっている。また、2023年度の日本全体の保護率は1.62%に対して、外国人世帯主世帯に属する人の保護率は、2023年度が1.93%であった。
今後も外国人の生活保護の適用を巡って政治的社会的に議論されていくだろうが、冷静な法律学からのアプローチが重要である。
研究部門 済生会総研 上席研究員 原田 奈津子
国際福祉機器展からみる福祉分野のトレンド
10月上旬に開催された国際福祉機器展を視察してきました。車やベッドなど最新の福祉機器が見られるだけでなく、AIを活用した事業、スポーツやレクリエーション活動の提案など、多様なニーズに対応した展示が増えていました。
スポーツの体験コーナーでは、サッカーやモルックなど、にぎわっていました。東京で今年行われるデフリンピック(きこえない・きこえにくい人のためのオリンピック)の紹介もありました。
この他、服や杖などの介護用品をはじめ、多様なデザインに関する展示も多く目にしました。ランウェイショーも行われており、福祉機器が日常に溶け込む様子も含め、人生における彩りを表現していました。また、展示の中で、印象的だったのは、電動車いすのブースでの人だかりです。洗練されたスマートな現物をみるとその進化がよくわかるのだと思います。
今年は、福祉の現場、特に人材をサポートするような試みの展示が目立ちました。シフトの調整や人員配置のサポート、介護報酬請求など運営に関する情報など、どのように業務効率化をすすめるのかという例示やセミナーなどもあり、参加者が熱心にメモを取りながら、聴き入る様子も目にしました。会場のあちこちで、職場のグループで訪れたと思われる方々が導入できるかどうかの検討をしている様子でした。
参加者の特徴として、例年、福祉施設の職員同士や、学生グループの姿も多く目にしていましたが、今年は外国の方も多く参加されているようでした。どの方々も、カタログやパンフレットを大事そうに抱えていました。
利用者や援助者の日常の中で、革新的な技術や製品をどう活用するのか、とても注目されていると思います。
今後も福祉機器の動向に着目していきたいと感じた1日でした。
―編集後記―
日本社会福祉学会に参加するために、10月上旬、京都に行きました。京都駅に着いた時から雨が降っており、滞在中はずっと雨でした。そんな雨の中、京都駅のバス停を眺めていましたが、よく報道されているように、海外からの観光客、修学旅行らしきグループ、地元の方といった方々が、バスにぎゅうぎゅうに乗り込んでいる姿に驚きました。人々の暮らしと観光、大きな課題だと感じました。
さて、写真はキンモクセイです。ほのかに香ってくるので、秋の気配に今年はうれしさが増しています。 (Harada)
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