済生会総研News Vol.08
日本での指摘は、あまりないが、日本の社会保障で他の先進国に比べ著しく劣っているのは、住宅関係の給付である。住宅関係の給付が、社会保障政策の部門として一般的に観念されていない。
イギリスで社会保障の研究をしていたころ、社会保障制度において「住宅給付制度」が定着していたことに関心を抱いた。「住宅給付制度」は、国民すべてを対象に家賃補助を行うもので、イギリス国民は、これを前提に人生設計をしていた。
イギリス人は、持ち家にこだわらず、生涯借家で暮らす人が少なくないのは、この制度が影響している。サッチャー政権の時に「労働者も資産家に」をキャッチフレーズに持ち家政策が推進されるなど制度の改正が、繰り返された。
基本的に住宅保障は、1942年のべヴァリッジ報告以来、福祉国家の重要な分野として考えられ、医療や福祉政策の基盤であった。NHS(国民保健サービス)発足以来コミュニティケアが効果を発揮したのは、住宅政策によって国民の良好な居住環境が、確保されたからだ。
ILOの「社会保障給付」やOECDの「社会支出」は、住宅に関する給付を明示して調査している。2013年のOECDの「社会支出」調査では、社会支出における住宅支出の割合は、日本は0.5%だったのに対して、イギリスは6.3%、フランスは2.6%、ドイツは2.2%と高い。
日本では住宅に関する給付は、生活保護の住宅扶助、公営住宅などに限定される。戦前は、内務省が生活困窮者問題の解決のため、住宅政策を重視した。
戦後は、国民の自助努力による持ち家政策が中心となった。これが勤勉な日本人の国民性に合致し、社会政策としての住宅政策が不十分な状態で現在に至った。
2025年問題に対処するため地域包括ケアが推進されているが、実効性があるためには、対象者の居住環境が問われる。ハード面で十分なスペースがあるか、移動が円滑にできるか、ソフト面では同居家族などの援助体制があるのかなどである。
在宅での看取りが推奨されるが、同様な条件が求められる。
老朽化した民間アパートでの一人暮らし高齢者を見ると、立派な政策の絵を描いても自宅でのケアや看取りは、壁にぶつかる。医療や福祉の政策を講じる場合は、居住条件を考慮することが必須だ。日本はこの分野の対策は、著しく遅れている。
研究部門
JMAP(Japan Medical Analysis Platform)地域医療情報システムについて
2014年10月から病床機能報告制度が開始されました。病院からは、構造設備・人員配置に関する項目、診療内容に関する項目、今後の進むべき方向性等を報告します。各都道府県は、それらの報告された情報をもとに地域医療構想(ビジョン)を策定します。この報告制度が開始されて、各病院においては、自院の報告すべき情報を取りまとめるだけではなく、近隣の医療需要の状況等を把握することへの必要性は高まっているものと思います。現在、各都道府県のホームページから各医療機関の提出内容を確認することが可能となっています。既に利用されているか方も多いかと思いますが、日本医師会のホームページにあるJMAP(http://jmap.jp/)地域医療情報システムを紹介いたします。JMAPは、医師会の会員を対象として地域の将来の医療や介護の提供体制について検討を行う際の参考、ツールとして活用することを目的としているものです。大きく3つに分かれていています。
①『地図から地域指定』では、都道府県、二次医療圏、市町村別で将来人口推計、医療・介護需要(2015年から2040年)、医療資源、介護資源の情報を得ることが可能です。
JMAP(Japan Medical Analysis Platform)
②『地域別統計』では、①と同様に地域指定が可能です。医療機関数・医師数・介護施設等の情報を得ることが可能です。
JMAP(Japan Medical Analysis Platform)
③『施設別検索』では、①と同様に地域の指定が可能です。医療機関、介護サービスの種類別に該当する機関を示すことが可能となっており、そこから簡単にGoogle Mapへの表示への変更も可能となっています。
JMAP(Japan Medical Analysis Platform)
JMAP(Japan Medical Analysis Platform)
これらの情報を活用して、将来の自施設のあるべき形を考えてみてはいかがでしょうか。
人材開発部門
人材開発部門 職種別ワーキング
済生会総研 人材開発部門の第2回ワーキング(以下WG)が以下の通り開催されました。
WGでは、済生会の病院長や事務管理者に求められる知識や能力についてや、第1回WGで提案された済生会施設間での人事交流制度について等、活発な議論が行われました。
病院長会や事務部長会等と連携しながら、今回議題となった各施策を具体化していき、次回WGであらためて議論する予定です。
【医師WG議題】1月17日(水)開催
1. 次世代指導者研修について
2. 病院長に共通して求められる知識・能力等について
3. 人材開発管理・担当者の育成について
4. 済生会施設間の人事交流制度について
【事務WG議題】1月12日(金)開催
1. 事務管理者に共通して求められる知識・能力モデルについて
2. 済生会施設間の人事交流制度について
3. 人材開発管理・担当者の育成について
【看護WG】2月6日(火)開催予定
≪参考≫ワーキングメンバーのご紹介(敬称略 50音順)
<医師> | <看護> | <事務> |
---|---|---|
青﨑 眞一郎 (川内病院 院長) 高木 誠 (中央病院 院長) 西田 保二 (前橋病院 院長) 山本 和秀 (岡山済生会総合病院 院長) 山森 秀夫 (習志野病院 院長) 吉田 俊明 (新潟第二病院 院長) |
池田 惠津子 (吹田病院 副院長(兼)看護部長) 伊藤 秀一 (有田病院 院長) 米須 久美 (野江病院 看護部長) 鈴木 典子 (常陸大宮済生会病院 看護部長) 髙橋 千晶 (山形済生病院 看護部長) 名古屋 恵子 (川口総合病院 看護部長) 藤原 佐和子 (神奈川県病院 看護部長) 宮岡 弘明 (松山病院 院長) |
黒川 正夫 (吹田病院 院長) 登谷 大修 (福井県済生会病院 院長) 中野 幸生 (松山老人保健施設にぎたつ苑事務長) 本多 一雅 (福岡県済生会 事務局長) 宮川 栄助 (熊本病院 副院長(兼)事務長) 宮部 剛実 (吹田病院 事務長) 吉田 英康 (特別養護老人ホームめずら荘 所長) |
<医師> | 青﨑 眞一郎 (川内病院 院長) 高木 誠 (中央病院 院長) 西田 保二 (前橋病院 院長) 山本 和秀 (岡山済生会総合病院 院長) 山森 秀夫 (習志野病院 院長) 吉田 俊明 (新潟第二病院 院長) |
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<看護> | 池田 惠津子 (吹田病院 副院長(兼)看護部長) 伊藤 秀一 (有田病院 院長) 米須 久美 (野江病院 看護部長) 鈴木 典子 (常陸大宮済生会病院 看護部長) 髙橋 千晶 (山形済生病院 看護部長) 名古屋 恵子 (川口総合病院 看護部長) 藤原 佐和子 (神奈川県病院 看護部長) 宮岡 弘明 (松山病院 院長) |
<事務> | 黒川 正夫 (吹田病院 院長) 登谷 大修 (福井県済生会病院 院長) 中野 幸生 (松山老人保健施設にぎたつ苑事務長) 本多 一雅 (福岡県済生会 事務局長) 宮川 栄助 (熊本病院 副院長(兼)事務長) 宮部 剛実 (吹田病院 事務長) 吉田 英康 (特別養護老人ホームめずら荘 所長) |
済生会総研から
済生会総研の26階の窓から見ることのできる増上寺では、毎年「節分」に豆まきが盛大に開催されます。そこで、あらためて「節分」って何だろうと考え、様々な資料調べてみました。「節分」とは、文字通り四季の季節を分ける時期のことで1年に4回ありますが、現在では「節分」といえば冬から春に移行する2月3日の「節分」が代表のようになっています。また、「節分」に行う豆まきは、邪気祓いの行事としての意味があるそうです。大きな声で「鬼は外、福は内」と豆まきをすることは、四季の変化がある日本の行事として大切なものであると考えました。しかし、昨今の住宅事情では、大きな声を出せる環境も限定的なのかもしれません。そのような方々には、関西発祥、コンビニエンスストアーで売り出し中「恵方巻」を食べて静かな「節分」を迎えることでもいいかもしれません。ちなみに今年の恵方は「南南東」だそうです。

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