済生会総研News Vol.07

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済生会総研の視点・論点 済生会総研 所長 炭谷 茂
第6回 ~ 民の経営、官の経営 ~

 11月下旬、ある福祉関係者の会合の講演に招かれた。この時「公立病院と同じ性格の済生会の理事長」と紹介された。済生会は、公に依存した甘い経営をしていることを言外に述べたかった意図が透けて見え、大変落胆した。
 済生会は、完全な民間団体である。赤字になったからと言って県立病院のように税金で補填してくれない。もし倒産した場合は、企業と同様な債務処理になる。ケースによっては、経営者は、個人的な賠償責任を追及される。
 私は、これを基本に緊張感を持って経営を行っている。済生会の内部でも機会あるごとに徹底をしている。しかし、世間では誤解されている。
 「民の経営」は、収益を得るために行われる。支出は、収益を得るための手段である。「官の経営」は、正反対で、支出をすることが仕事である。したがって、官には、「稼ぐ」という観念が存在しないので、官で働く人は、「稼ぐ」という経験をしない。
 官の世界で仕事をしていたころ、財政当局から予算を獲得することにエネルギーの半分を使った。財政当局を論理と政治力学を駆使して説得する。連日の徹夜の交渉で獲得したときは、自己満足に浸った。
 獲得した予算は、自分が稼ぎ出したお金のように誤解にする。国民経済から見れば、税収の移転にしか過ぎない。汗を流して「稼いだ」のではない。
 「官の経営」は、顧客獲得、マーケティング、利子、減価償却、税負担など「民の経営」でのABCが存在しない。
 国家公務員在職中に3年間、特殊法人の金融機関の経験もした。当時の特殊法人は、官と民の中間に位置し、両者の長所を取り込むはずが、両者の欠点を集めただけだった。
 済生会は、特殊法人の轍を踏んではいけない。「官の経営」とは全く異なる「民の経営」である。民間団体として常に黒字経営を志向しつつ、高度な公的使命を果たす。収益のない事業も含まれるので、他で得た利益を回さなければならない。このため済生会は、他の病院よりも厳しい経営が求められる。
 済生会は、この狭い険しい道を歩んでいかねばならない。済生会の創設にも関係した渋沢栄一の「論語と算盤の精神」と一致する。激動する日本において済生会の使命は、増大しているので、ますます算盤に習熟しなければならない。
 済生会総研の設立の最大の目的もここにある。

研究部門

済生会学会におけるシンポジウムに向けて

 毎週木曜に行っている研究ミーティングの拡大版を12月7日に実施した。今回、2月に行われる済生会学会のシンポジウムに向けて、松原所長代理、山口研究部門長、持田上席研究員、原田上席研究員に加えて、篠原上席客員研究員(山口地域ケアセンター)と藤本客員研究員(産業医科大学)も参加し、打ち合わせを行った。また、炭谷所長との打ち合わせも行い、研究や取り組みについて発信することや、済生会総研の果たすべき役割について改めて確認をした。
 その話し合いの結果、シンポジウムでの発表に関して以下の通りとなった。
 なお、座長は山口研究部門長が務める。

済生会学会での済生会総研によるシンポジウムの発表者と概要

  • ① 松原所長代理
     「済生会総研の目的と方向性」
      済生会総研の設立目的や研究部門と人材開発部門の方向性についての説明
  • ② 原田上席研究員
     「済生会総研における福祉分野に関する研究の全体像と活動報告」
      なでしこプラン、地域包括ケア、DCATに関する研究についての発表
  • ③ 篠原上席客員研究員
     「社会福祉法人として取組む刑余者支援~実践報告から~」
      山口地域ケアセンターで行っている刑余者支援の実践についての発表
  • ④ 持田上席研究員
     「DPC等のデータを活用した病院経営の在り方及び病院経営に資する分析手法等に関する研究の進捗状況の報告」
      各病院からの客員研究員とチームで行っている2つの研究についての発表
  • ⑤ 藤本客員研究員
     「都道府県での医療及び介護政策におけるビッグデータの活用」
      自治体における医療と介護に関するデータ分析が政策にどう活用されるかに関する情報提供

 上記の通り、研究成果の有意義な発信の機会となるよう取り組むことが確認された。フロアとの意見交換もあわせて行う予定である。
 よりよいシンポジウムになるようご協力のほどよろしくお願いいたします。

 

人材開発部門

研修の報告

【第8回 全国済生会屋根瓦研修推進のためのワークショップ】

 12月1日~2日に全国済生会屋根瓦研修推進のためのワークショップが開催され、初期研修医及び後期研修医24名が参加しました。これまで“教わる”立場が多かった初期研修医や後期研修医医師が今後は医学生や研修医を“教える”側の立場になった時に「どのように教えればよいのか」といった疑問や不安を解消するためにこのワークショップは実施されています。この研修では1日目に東京ディズニーリゾートが企業・団体向けに実施している「ディズニーアカデミー」を受講します。ここではディズニーが従業員の教育に用いている企業理念の浸透方法やモチベーションを高める人材育成術を学んだ後、実際にディズニーパークに行きそこで働くトレーナーから教育で心掛けていることなどの話を聞きました。
 2日目は1日目に学んだことを臨床現場に置き換えた「済生会オリジナルワークショップ」を実施しました。「後輩医師に中心静脈穿刺を教える」という想定で、参加者がグループごと指導者役・研修医役・評価者役に分かれCVC穿刺挿入シミュレータを用いたロールプレイ実習を通して相手に教えるためにはどのような準備と手順が必要かディスカッションを行いました。
 この研修のテーマは「Teaching is learning」。屋根瓦方式の教育を推進するためにこのワークショップを通して“教えるコツ”を学びます。そして他者に教えることは“自らの学習につながる”ことを参加者と過去にこの研修に参加したファシリテーターと一緒に考えます。

済生会総研から

 済生会総研が設立されてからはじめての年末年始を迎えます。現在、シンポジウムの準備もそうなのですが、中期事業計画の重点項目について済生会総研も担う部分があり、鋭意取りまとめをしております。これまでのそしてこれからの研究や活動を取り組みに反映できるようにしていきたいと考えております。来年もよろしくお願いいたします。

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