総研とはAbout

ご挨拶

所長 炭谷茂
所長
炭谷茂
済生会総研の発足に当たって 済生会保健・医療・福祉研究所(以下「済生会総研」という。)は、本会創設100周年記念事業として、平成29年2月25日に発足しました。
済生会総研は、済生会の理念を具体化するための「研究」と「人材開発」の二つの重要な任務を担います。

済生会は、社会が直面する問題に対して果敢に挑戦を続けています。
済生会のミッションである生活困窮者への支援、患者さんの立場に立った質の高い医療サービスの提供、地域包括ケアの確立は、日本の緊急課題ですが、効果的・効率的に実現するための方法は、未開拓な面が多いのが実情です。
済生会総研は、これらについて研究を行い、具体的で実現可能な道を明らかにしていきます。研究に当たっては、常勤の研究員に加え、済生会の医療・福祉の現場で実際に仕事に従事する職員も参加します。済生会の有するすべての力を集中させますので、実りの多い成果を得ることができると確信しています。

済生会の病院や施設などの経営に従事する職員の人材開発に当たっては、専門的な知識や技術の習得とともに、済生会の理念を徹底させ、患者さんや利用者さんに対して温かな心を持つ済生会人を養成していきます。

済生会総研は、済生会のみならず日本の保健、医療、福祉の発展のために力を尽くしていきたいと思います。


事業概要Summary

研究事業

3つの基本的使命を遂行するために、日本最大の社会福祉法人というフィールドを活かした実務的・実用的な研究を展開していきます。

開設当初に重点的に取組む研究テーマについて

  • DPC等のビッグデータを活用した地域医療構想における病院経営の在り方及び病院経営に資する分析手法等に関する研究
  • 済生会の地域包括ケアモデル(PDF)の実践とその普及等に関する研究
  • なでしこプランの評価方法及び効果のエビデンスの集積等に関する研究

人材開発事業

3つの基本的使命を着実に果たすために「済生会人」を育成していきます。

済生会人とは

済生会人とは、「施薬救療の精神」を理解し、体現する人材です。

 「施薬救療の精神」を中核として、その精神を理解し、体現する人材を「済生会人」と定義します。

 済生会は、明治天皇による「済生勅語」によって設立され、「施薬救療の精神」に基づく生活困窮者の救済を使命としています。その精神的源流を紐解けば、593年に聖徳太子が設立した悲田院、施薬院、療病院にまで遡ることができます。済生会人は、本会設立の歴史的意義を自覚し、歴史の重さから生み出される品格を示していくべきです。

 生活困窮者を救済するための社会保障制度が整う今日においても、現実的には救済しきれない新たな複雑化した問題を抱える生活困窮者は存在しており、更にはその存在自体が埋もれている(顕在化していない)生活困窮者も存在します。済生会人は「社会の最終ライン」を守るという気概を持って、制度や市場原理では対応できない生活困窮者を救済していきます。

「施薬救療の精神」を体現するとはどのようなことを指すのでしょうか。

おもいやり

おもいやり

 
確かな知識と技術

確かな知識と技術

 
協働

協働

 
開拓性と先駆性

開拓性と先駆性

 
持続的発展

持続的発展

人々の幸せに資するよう、おもいやりの精神でのぞみます。

 多様で複雑化する問題を抱える患者・利用者、またはその家族等が何を必要としているのか。更にはその存在自体が埋もれている(顕在化していない)生活困窮者も存在しており、そのような問題は個人の問題のみではなく、地域社会の問題でもあります。「施薬救療の精神」を的確に発揮するためには、全職員が倫理観や人権意識を自覚し、本人の意思を尊重しながら真のニーズや背景にある課題を把握すること、おもいやりの精神を持つことが必要です。

専門職として身に着けるべき確かな知識と技術に基づく質の
高いサービスを提供します。

 日々進化・発展する保健・医療・福祉分野の科学的・体系的な知識や技術を絶えず学び、研鑽し、研究し、患者・利用者の意思を尊重しながら、質の高いサービスを提供することが「施薬救療の精神」の体現です。このことは済生会に勤める全職種について、その役割において求められる確かな知識と技術を身に着けていく姿勢を求めるものです。

地域に根差し、人と人をつなぎます

 多様化、複雑化する保健・医療・福祉のニーズに対応していくためには、個々の有する知識や技術だけでは限界があることを深く自覚することも必要です。世界最大規模の民間非営利の医療・福祉団体である済生会全職員が一体感を持ち、個々の有する専門性、技術等の各種資源をつなげていくこと、チーム・組織として活動していくことで知識や技術を的確に発揮し、「施薬救療の精神」を体現することができます。

また本会だけでは対応できない課題であっても、行政機関、他の医療機関や福祉施設、住民等といった人をつないでいくことや医療、福祉、雇用、教育、住居等といったサービスや制度をつないでいくことで総合的に課題の解決を図ることが可能となります。広く、多様なつながりを構築し、地域社会の課題をも解決していくということは、その地域とともにまちをつくっていくことにほかなりません。

更には国際社会の一員として、海外の途上国において生じている保健・医療・福祉に関する課題に対しても、グローバルにつながり解決していくことで「施薬救療の精神」を体現していきます。

開拓の分野においても本会の力を結集し、地域の課題解決に挑戦します。

 本会は、設立当初より巡回診療を実施し、関東大震災をきっかけとした巡回看護班の設置、日本で初めて「社会部」を設けMSW事業を行ってきたことなど、その時代やその地域社会において求められるニーズを開拓し、先駆的な取組みを行ってきました。

 今日の多様化、複雑化した問題を抱える患者・利用者においては、既存のサービスや制度に必ずしも当てはまらないことがあり、本人やその家族等のニーズを起点にした新たなサービスの創造が必要になる場面も十分起こり得ます。これからも患者・利用者との関わりや地域社会とのつながりの中やから潜在的なニーズや地域全体の課題を見出し、未開拓の分野においても本会の力を結集し、地域の資源ともつながりながら、先頭に立って地域の課題解決に挑戦していきます。

無駄な費用となっていないか、経営資源を有効活用しているかを点検し、
事業の持続的発展に努めます

 「経営」や「経済」という言葉を「利益優先」という意味に解釈する人もいるでしょう。本会設立世話人の一人である渋沢栄一は「論語と算盤」の中で、論語と算盤は一見相反するものであるが、経営の両輪であり、公益の追求と健全経営を両立させる必要性を説いています。

 職員一人ひとりが日々の業務において、常に無駄な費用となっていないか、経営資源を有効に活用しているかを意識して事業の持続的発展に努めなければ、将来の設備や人材への投資、制度の狭間に生じる課題に応じた公益的な活動を行うための原資を確保することはできません。すなわち、その時代や地域社会の求めるニーズに応じて「施薬救療の精神」を発揮し続けていくことはできないのです。


研究員紹介Staff

所長メッセージ

炭谷 茂

 医療と福祉を囲む環境は、激変している。
 人口減少、少子超高齢社会、地球環境の危機、デジタル社会、グローバル化、国家財政の逼迫、社会的責任意識を欠く企業、地方の衰退、拡大する所得格差、社会的排除・孤立化等々、私が関心を持つキーワードを羅列するだけでも、日本の医療や福祉を巡る環境は、戦後以降最大の変化に直面している。
 さらに今年に入り、新型コロナウイルスの猛威が加わった。世界は1929年の世界恐慌に匹敵する激震で、国際政治、経済、社会、文化などあらゆる分野に多大な影響を及ぼしている。医療や福祉の分野もこれから逃れられない。
 このような空前絶後の厳しい環境下で医療と福祉を担う日本最大の非営利民間団体である済生会の使命は、むしろ増大している。
 本会は、国や自治体からの赤字補填のための財政援助はなく、経営の安定化が絶対条件である。増大する崇高な使命を果たしながら、経営バランスを取るという狭隘な道を歩いていかなければならない。
 済生会総研の役割は、この道を明快に具体的で示すことである。しかし、実務に埋没した研究は、場当たり的で、将来への理想と展望を欠く。第3者への説得力が乏しい。理論のみでは机上の空論、畳の上の水練に終わる。
 本研究所は、従来から理論と実務の橋渡しの役割を担ってきたが、歴史的な激変を見せる現下の情勢は、この観点を改めて確認することが必要である。

所長代理メッセージ

松原 了

 肝臓、胆道膵臓の外科医師としての10年間、臨床研究はしていましたが、その後(当時)厚生省に勤務しましたので、北里大学衛生学で相澤教授指導の下、肺がんと塵肺、喫煙の関係で博士論文を書いて以来、研究らしい研究歴はありません。官僚としての長い経験から、論理的思考は身に着けたつもりです。医学生物学では研究とは、それまでにない新しい知見を見つけるものと思っていました。
 今回あらためて「研究」について調べたところ、研究とは「ある特定の物事について、人間の知識を集めて考察し、実験、観察、調査などを通して、その物事についての事実を深く追求する一連の過程である」との説明が最もしっくりしました。新たな視点は必要ですが、新しい発見のような結果は敢えて問わないという事のようです。
 特に人文科学や社会科学においては、自然科学のような輪郭のはっきりした結果が出るとは限りません。あるテーマについて、多角的な面から複数の研究者が考察し、議論を深めて行く過程やそれら足跡の集積も広い意味での成果であると言うことだと思います。
 総研の大きなテーマである連携、包括、経営というくくりの中で、職員の皆様が日々仕事をしている中で抱く疑問を解き明かしたい人、解決につながる道に近づきたいと思う人は是非研究に参加して欲しい。
 総研は探求心を持った人々の知的活動のプラットホームとして活用してもらいたい。総研スタッフの研究だけではなく、様々の好奇心や関心を抱く済生会職員はどんな形であれ参加可能です。

人材開発部門

 総研人材開発部門では、「済生会人材確保・育成対策大綱」に掲げられた指針に沿いながら、本会職員のあるべき姿「済生会人像」を目指して人材育成を進めています。
 令和元年度は、医師臨床研修関連、職種別マネジメント、看護分野、社会福祉・地域包括ケア分野等、計24コースの研修を実施しています(新型コロナウィルスの影響で延期等したものを含みます)。
 令和2年度からは、総研、各ブロック・支部・施設等の研修主体が同じ方針・体系で人材育成が行えるよう、令和2年2月に「済生会人材育成計画」を策定しました。これから各施設等の研修担当者・職能団体等と協議・調整を進め、法人としての人材育成を進めていくこととしています。

人材育成計画書