済生会保健・医療・福祉総合研究所
済生会保健・医療・福祉総合研究所

次の100年へ、先人の想いをつなぐ
一人ひとりの幸せを守るために

済生会は「社会の最終ライン」を守るという気概を持って、3つの基本的使命(生活困窮者への支援、地域医療への貢献、総合的な医療と福祉サービスの提供)を遂行していきます。

済生会は、明治天皇による「済生勅語」によって設立され、「施薬救療の精神」に基づく生活困窮者の救済を使命としています。生活困窮者を救済するための社会保障制度が整う今日においても、現実的には、救済しきれない新たな複雑化した問題を抱える生活困窮者は存在しており、更にはその存在自体が埋もれている生活困窮者も存在しています。
そのような環境下においてこそ、本会は3つの基本的使命を、時代の変化を踏まえながら的確に果たし続けていく必要があります。しかしながら使命を果たすためには、経営基盤を安定させる必要があり、両者を両立させるための研究と両者の両立を支える人材の確保・育成が急務となっているのです。

済生会総研News Vol.07

済生会総研の視点・論点 済生会総研 所長 炭谷 茂
第6回 ~民の経営、官の経営~

 11月下旬、ある福祉関係者の会合の講演に招かれた。この時「公立病院と同じ性格の済生会の理事長」と紹介された。済生会は、公に依存した甘い経営をしていることを言外に述べたかった意図が透けて見え、大変落胆した。
 済生会は、完全な民間団体である。赤字になったからと言って県立病院のように税金で補填してくれない。もし倒産した場合は、企業と同様な債務処理になる。ケースによっては、経営者は、個人的な賠償責任を追及される。
 私は、これを基本に緊張感を持って経営を行っている。済生会の内部でも機会あるごとに徹底をしている。しかし、世間では誤解されている。
 
 「民の経営」は、収益を得るために行われる。支出は、収益を得るための手段である。「官の経営」は、正反対で、支出をすることが仕事である。したがって、官には、「稼ぐ」という観念が存在しないので、官で働く人は、「稼ぐ」という経験をしない。
 官の世界で仕事をしていたころ、財政当局から予算を獲得することにエネルギーの半分を使った。財政当局を論理と政治力学を駆使して説得する。連日の徹夜の交渉で獲得したときは、自己満足に浸った。
獲得した予算は、自分が稼ぎ出したお金のように誤解にする。国民経済から見れば、税収の移転にしか過ぎない。汗を流して「稼いだ」のではない。
 「官の経営」は、顧客獲得、マーケティング、利子、減価償却、税負担など「民の経営」でのABCが存在しない。  
国家公務員在職中に3年間、特殊法人の金融機関の経験もした。当時の特殊法人は、官と民の中間に位置し、両者の長所を取り込むはずが、両者の欠点を集めただけだった。 
 
 済生会は、特殊法人の轍を踏んではいけない。「官の経営」とは全く異なる「民の経営」である。民間団体として常に黒字経営を志向しつつ、高度な公的使命を果たす。収益のない事業も含まれるので、他で得た利益を回さなければならない。このため済生会は、他の病院よりも厳しい経営が求められる。
 済生会は、この狭い険しい道を歩んでいかねばならない。済生会の創設にも関係した渋沢栄一の「論語と算盤の精神」と一致する。激動する日本において済生会の使命は、増大しているので、ますます算盤に習熟しなければならない。
 済生会総研の設立の最大の目的もここにある。

研究部門 済生会学会におけるシンポジウムに向けて

 毎週木曜に行っている研究ミーティングの拡大版を12月7日に実施した。今回、2月に行われる済生会学会のシンポジウムに向けて、松原所長代理、山口研究部門長、持田上席研究員、原田上席研究員に加えて、篠原上席客員研究員(山口地域ケアセンター)と藤本客員研究員(産業医科大学)も参加し、打ち合わせを行った。また、炭谷所長との打ち合わせも行い、研究や取り組みについて発信することや、済生会総研の果たすべき役割について改めて確認をした。
その話し合いの結果、シンポジウムでの発表に関して以下の通りとなった。
なお、座長は山口研究部門長が務める。

済生会学会での済生会総研によるシンポジウムの発表者と概要

① 松原所長代理 
「済生会総研の目的と方向性」
済生会総研の設立目的や研究部門と人材開発部門の方向性についての説明

② 原田上席研究員
「済生会総研における福祉分野に関する研究の全体像と活動報告」
なでしこプラン、地域包括ケア、DCATに関する研究についての発表

③ 篠原上席客員研究員
「社会福祉法人として取組む刑余者支援~実践報告から~」
山口地域ケアセンターで行っている刑余者支援の実践についての発表

④ 持田上席研究員
「DPC等のデータを活用した病院経営の在り方及び病院経営に資する分析手法等に関する研究の進捗状況の報告」
各病院からの客員研究員とチームで行っている2つの研究についての発表

⑤ 藤本客員研究員
「都道府県での医療及び介護政策におけるビッグデータの活用」
自治体における医療と介護に関するデータ分析が政策にどう活用されるかに関する情報提供

 上記の通り、研究成果の有意義な発信の機会となるよう取り組むことが確認された。フロアとの意見交換もあわせて行う予定である。
よりよいシンポジウムになるようご協力のほどよろしくお願いいたします。

 
人材開発部門 研修の報告 【第8回 全国済生会屋根瓦研修推進のためのワークショップ】 研修の報告

 12月1日~2日に全国済生会屋根瓦研修推進のためのワークショップが開催され、初期研修医及び後期研修医24名が参加しました。これまで“教わる”立場が多かった初期研修医や後期研修医医師が今後は医学生や研修医を“教える”側の立場になった時に「どのように教えればよいのか」といった疑問や不安を解消するためにこのワークショップは実施されています。この研修では1日目に東京ディズニーリゾートが企業・団体向けに実施している「ディズニーアカデミー」を受講します。ここではディズニーが従業員の教育に用いている企業理念の浸透方法やモチベーションを高める人材育成術を学んだ後、実際にディズニーパークに行きそこで働くトレーナーから教育で心掛けていることなどの話を聞きました。
 2日目は1日目に学んだことを臨床現場に置き換えた「済生会オリジナルワークショップ」を実施しました。「後輩医師に中心静脈穿刺を教える」という想定で、参加者がグループごと指導者役・研修医役・評価者役に分かれCVC穿刺挿入シミュレータを用いたロールプレイ実習を通して相手に教えるためにはどのような準備と手順が必要かディスカッションを行いました。
 この研修のテーマは「Teaching is learning」。屋根瓦方式の教育を推進するためにこのワークショップを通して“教えるコツ”を学びます。そして他者に教えることは“自らの学習につながる”ことを参加者と過去にこの研修に参加したファシリテーターと一緒に考えます。

済生会総研から

 済生会総研が設立されてからはじめての年末年始を迎えます。現在、シンポジウムの準備もそうなのですが、中期事業計画の重点項目について済生会総研も担う部分があり、鋭意取りまとめをしております。これまでのそしてこれからの研究や活動を取り組みに反映できるようにしていきたいと考えております。来年もよろしくお願いいたします。

済生会総研News Vol.06

済生会総研News vol.06全文はこちらから

済生会総研の視点・論点 済生会総研 所長 炭谷 茂
第5回 ~発展する学問の活用~

 8月下旬、金沢市で開催された済生会病院長会での講演で「医学の進歩は,激しい。学生時代に学んだことと現在の医療と異なることがかなりある」と聞いた。理科系の学問については、知識が乏しいが、社会科学系の学問についても日進月歩だ。
 国家公務員を退官後、今年の文化功労章を受章された村松岐夫先生に招かれ、学習院大学法学部の特別客員教授として行政学関係の講義を担当した。このため現在大学で使用されている代表的な行政学の教科書を数冊買い求めた。
 読んでみると、学生時代のものと全く異なる。学生時代は辻清明や吉富重夫の教科書が一般に読まれていた。欧米の理論の説明が多く、難解で一語一語吟味しながら読み進んだ。現実の日本の行政に当てはまるのか疑問に感じた。
 しかし現在の教科書は、日本の行政の実態を基礎にしている。私が行政実務の経験を積んだためか、大変分かり易い。行政官には実務に役立つ内容である。学問として異次元の発展を遂げている。

   福祉の分野も全く同様である。私が旧厚生省に勤務したころの福祉関係の文献は、極めて難解だった。繰り返し読んでも理解できなかった。
 昭和40年代までの「社会福祉学」(学と呼ぶのが適当か議論もあったが)の研究者の大半は、哲学、歴史学、経済学など他の分野から中途に転じた人だった。哲学のように一つの言葉を徹底的にこだわって論じる、マルクス経済学から日本の福祉を徹底的に批判するなどの内容で、行政には役に立たなかった。
 この段階が日本の社会福祉学の第1期である。第2期になると、研究者は、スタート時点から社会福祉を専攻する人が主力になった。福祉の現場からの情報を基礎に研究が行われるようになった。対人サービスの実施方法、社会福祉施設の経営、社会福祉政策のあり方など現実的なテーマについて研究成果が出されるようになった。
 平成に入ると多くの福祉系大学が設立され、福祉の現場や行政の経験者がたくさん研究分野に加わった。このため社会福祉学は、実務に極めて接近し、実用性を増してきた。これが第3期である。
 これから第4期に入らなければならない。第1期からの研究成果を踏まえ学問的に深く、実質的に福祉の向上に貢献する社会福祉学の発展を期待したい。
 済生会総研は、社会福祉学の成果を活用して研究を行う一方、社会福祉学の発展に貢献したい。

研究部門 総研近況済生会総研 研究部門長 山口 直人

 本年4月から済生会総研の研究部門長を務めています。来年3 月までは東京女子医科大学との兼務ですので毎週木曜日に勤務し、原田上席研究員、持田上席研究員を始め、本部の皆さんとも楽しく仕事をしています。自分自身は本格的な仕事はできていないため、自己紹介も含めて、済生会の発展に向けて検討したいと考えていることを書きたいと思います。

 私は医学部卒業以来、疫学を仕事としてきました。疫学は、急性伝染病の原因究明が主な領域でしたが、1950 年代以降は、がん、循環器疾患などの慢性疾患を対象として発展してきました。その中で確立されたのが長期追跡調査の重要性です。コホート研究と呼ばれる追跡調査を重視する手法が発展し、その結果として、アウトカム重視の疫学が確立しました。臨床医学の世界でも、治療行為が患者にどのようなアウトカムをもたらすかを追跡調査で究明する臨床疫学が発展しました。

 近年、情報技術の発展に伴って追跡調査も効率化され、治療行為のデータベースと治療効果や有害事象などのアウトカムのデータベースを共通ID コードで連結して、データベース上で追跡調査を行う研究手法が発展しつつあります。済生会本部が運営する経営管理システムは膨大な臨床データ、経営管理データを含んでおり、その中で、医療行為とアウトカムの関連が分析できないか、是非とも検討を進めたいと考えています。特に、有害面でのアウトカムは評価が困難であるばかりでなく、有害事象への治療という本来は必要なかった医療行為が経営面にもマイナスに作用し、さらに、医療の質に対する社会の評価にも影響します。有益性と有害性の両面で分析を進めていきたいと思います。

 医療の標準化は確実に進んでいます。私は長年、診療ガイドラインの作成と活用の事業に関わってきましたが、診療ガイドラインでは、科学的根拠の確実性、有益性と有害性のバランスを考慮した推奨が提示され、医療サービスの整合性が改善されてきました。福祉については勉強中ですが、医療と同様に福祉についても、どのような方法が最適なのかを検討してゆくことは有益と考えます。福祉のデータベースがさらに充実してくれば、そのような標準化も可能となるでしょう。さらに、医療のデータベースと福祉のデータベースが共通ID コードで連結できれば、医療と福祉の連携についての分析の幅と深さが増すと考えます。

 済生会に入職してから、医療も福祉も個別的な取り組みが重要であることを以前にも増して痛感ようになりました。データベースの分析は施設間格差の解消、許容範囲を超えた診療のバラツキを改善してゆくことに役立ちますが、医療や福祉の利用者の個別性、価値観の多様性への配慮がきわめて重要です。施設についても、地域的な個別性に配慮した、それぞれの施設の目指す方向性を尊重した活動を済生会総研は目指すべきと考えます。御指導をよろしくお願いいたします。

 
人材開発部門 研修の報告 研修の報告
【第2回 済生会地域包括ケア連携士養成研修会】

 11月13日から16日の4日間にわたり、第2回済生会地域包括ケア連携士養成研修会が開催された。病院のMSWや看護師、福祉施設の相談員、介護支援専門員、訪問看護師など、様々な連携業務に携わる86 名が参加した。本研修は、5年で500名の済生会地域包括ケア連携士(以下、連携士)を養成する予定で、今回で2回目の開催となる。
 講義内容は、高齢、障害、児童、生活困窮者など各分野における連携や、施設における地域貢献、さらには、ケアマネジメントやICF、職種間連携など多岐にわたった。
 90分の講座が15回続くハードな研修となったが、「始まる前は長いと思っていたが、充実した講義でそれを感じなかった」、「どれ一つとっても、貴重な講義ばかりでよかった」、「4日間では時間が足りない」といった意見が寄せられた。
 また、グループワークや交流会を通じた、他の施設との情報交換が刺激となったとの意見も多かった。
 今後、課題レポートが提出された後に、済生会地域包括ケア連携士認定書が発行される。本研修により養成された連携士が、各職場でその力量を十分に発揮できるよう、組織全体で取り組んでいくことが期待される。

済生会総研から

 来年4月の診療報酬・介護報酬改定は、サービス提供体制を効率的なものにする事や医療から介護にむけて、スムーズな流れを作ることが求められます。これまでに様々な情報が発信されています。それぞれの施設で何をするべきか、どこまでできているのか十分に把握し、施設内で情報共有して準備を進めて、診療報酬・介護報酬改定を良い形で乗り越えてましょう。済生会総研でも必要なデータがあるようでしたら協力させていただきます。よろしくお願いします。

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