済生会保健・医療・福祉総合研究所
済生会保健・医療・福祉総合研究所

次の100年へ、先人の想いをつなぐ
一人ひとりの幸せを守るために

済生会は「社会の最終ライン」を守るという気概を持って、3つの基本的使命(生活困窮者への支援、地域医療への貢献、総合的な医療と福祉サービスの提供)を遂行していきます。

済生会は、明治天皇による「済生勅語」によって設立され、「施薬救療の精神」に基づく生活困窮者の救済を使命としています。生活困窮者を救済するための社会保障制度が整う今日においても、現実的には、救済しきれない新たな複雑化した問題を抱える生活困窮者は存在しており、更にはその存在自体が埋もれている生活困窮者も存在しています。
そのような環境下においてこそ、本会は3つの基本的使命を、時代の変化を踏まえながら的確に果たし続けていく必要があります。しかしながら使命を果たすためには、経営基盤を安定させる必要があり、両者を両立させるための研究と両者の両立を支える人材の確保・育成が急務となっているのです。

済生会総研News Vol.16

済生会総研の視点・論点 済生会総研 所長 炭谷 茂
第15回 ソーシャルインクルージョン論の展開

 ソーシャルインクルージョンという言葉が、ようやく日本でも使われるようになった。新しい言葉が、定着するまでには時間を要する。社会の変化を敏感に捉える地方自治体では、ソーシャルインクルージョンを理念とする政策が推進されている。
 平成12年12月、日本で初めて公文書でソーシャルインクルージョンという言葉を使用し、日本社会での必要性を訴えた。
 その年の1月始め、社会保障の意見交換のため、英国政府の招待を受けて英国を訪れた。意見交換の相手は、保健担当閣外大臣、社会保障政策に精通した議員などの要人だったので、英国の政策の方向を知ることができた。
 昭和50年、10カ月という短期間だったが、英国で社会保障の調査を行う貴重な機会があった。この時に英国の典型的な地方都市を訪れると、教会を中心に住民のつながりが強く、ボランティア活動は活発だった。高齢者も障害者も、住民の援助を受けながら安心して暮らしている姿に接した。これが英国社会を支えていると実感し、日本にとっても参考になると考え、見聞したことを材料にいくつかの論文を発表した。感情が高揚した内容だった。
 平成12年の訪英の際もこのような状況が、英国で存在していると思い込んでいたが、要人から出た発言は、異口同音にこのような状況は、過去になりつつあるという。地域のつながりが弱体化し、失業している若者、障害者、ホームレス(日本のように野宿生活者だけでなく、定まった住居を有しないすべての者をいう)、薬物依存症の者、外国人など異質な者が、地域社会から排除されるようになった。
 地域社会の崩壊は、国家の崩壊につながる。このためソーシャルインクルージョンの理念が英国政治の中核に据えられ、首相直轄の組織を新設し、新規政策が積極的に講じられた。
 ソーシャルインクルージョン政策は、英国だけでなく、フランス、ドイツ、イタリアなどヨーロッパ諸国で広く採用されるようになった。
 1974年、フランスの社会学者ルネ・ルノワールが「社会的排除」という概念を世界で最初に提示し、フランスで貧困者、高齢者、障害者、薬物中毒者など10%が社会から排除されていると論じた。このような状況が、ヨーロッパ各国に広がったのである。最近でも外国人に対する暴力的な排除行動が、日本のメディアで報道される。
 日本でも同様である。平成12年、NHKが「無縁社会」と題するドキュメンタリーで3万人以上の無縁死を報道し、社会に大きな衝撃を与えたが、この状況は、相当以前から日本社会で生じていた。この現象は、多分野で現れ、ますます激化している。日本社会でもソーシャルインクルージョンの研究の深化と具体的事業の実施が急務である。

研究部門 済生会総研 所長代理 松原 了

専門医制度について考える

 専門医制度を進めるにあたっての重要な必要条件は、専門性の認定をどのように客観化できるかという点と、専門医療を受けたいと望む患者がどのように、希望に沿った専門医に到達できるか(アクセシビリティ)、という点である。
 専門性の認定については、規定の研修や(技能)試験を課す、経験値を考慮するなどの方法があるが、審査に客観性をどう取り入れ、反映させるかが課題である。米国のようにプロフェッショナル集団である学会が行うのが望ましいが、国民の信頼に応えるだけの学会の立ち位置が確立されていない。各種学会がたとえ実質的にその任を担うことが可能であっても、客観性の観点からどうしても第三者機関という仕組みが求められるであろう。
 また、試験や審査を行う場合、それに伴う事務量・費用は相当な負担になることから、学会で費用を捻出しマンパワーを備えることは容易ではなく、効率的でない。必然的に専門医機構がその役割を果たすことになるであろう。専門性をどのように測り、実証するかについては、学会の専門性を生かすことが適当であり、既存の認定制度や専門医認定の方策などを参考にしつつ改良することがベストな選択肢であろう。単に経験期間や症例数だけでは不十分かも知れず、筆記や口頭試験などといった要素を審査に取り入れる必要がある。とりわけ外科系においては技量についての厳格な評価が要求される。
 専門医へのアクセシビリティについては、どんな過程を経て、患者が、自分が望む専門医師に到達できるのかが重要である。わが国では、週刊誌やテレビ番組から得る情報以外には、法律上の制約から専門医師に関する情報は知りようがない。偶々、医師の知人がいる患者は、医師の人脈を辿って紹介を得ることはできるが、限定的であり信頼度も必ずしも完全ではないし、公平・公正性から見て適切ではない。
 現在の仕組みでは、一般に初診の医師の出身大学医学部や学会での先輩・友人・知人の縁を基に、専門医師を紹介することが通例だが患者にとっては必ずしも満足たりえないであろう。想定される仕組みは、おおよそ以下の通りになるであろう。
 患者は初診医師に専門医師の紹介を依頼する。医師は第三者認定機関などによって作成された一覧を見せ、患者は交通等の事情を考慮して医師と相談することになるであろう。専門医師の一覧には、現在の広告規制を解除し、医師の専門性にかかる情報等を公開することが前提となるのではないか。これを法的に整備しない限り、患者にとってその使いやすさ、有効性は、現在と五十歩百歩の違いでしかないことになる。

人材開発部門

アドバンス・マネジメント研修

 本年度2回目の開催となる次世代の看護管理者を目指す中堅看護師を対象にしたアドバンス・マネジメント研修Ⅳの第2回を8月22~24日に本部で開催し、56施設から65人が参加されました。7月の第1回と合わせて136人が修了となりました。
 平成26年度から開始したこの研修は今年で5年目を迎えました。次世代の看護管理者を対象とした本部研修はⅠ~Ⅳに分かれており、このアドバンス・マネジメント研修Ⅳが最終段階にあたり、これまでの受講者は約1500人に上ります。
 受講後のアンケートでは「今回の研修で自分の役割は何かを再確認し反省点も見つかった」「日々の業務や今後のマネジメント、キャリア形成においてとても学びになった」という感想をいただきました。

福祉施設リーダー研修

 7月に続く今年度2回目の福祉施設リーダー研修を9月4~5日に本部で開催し、23人が参加されました。プログラムは1回目と同様で、はじめに炭谷理事長が「済生会の福祉事業~社会の期待に応える~」と題し、障害者支援や刑余者の社会復帰など、済生会が果たす役割は大きいと語られました。

 その後、外部講師が担当したグループワークでは、「自分たちが目指す済生会グループの施設のあり方」と「現状における問題点」を参加者同士で議論しました。リーダーとしての心構えやコミュニケーションスキルを学ぶ演習も行なわれました。
 本研修は年2回が通例ですが、今年は3回の計画で、3回目は10月16~17日に岡山市で開催予定です。

認知症支援ナース育成研修

 済生会独自の「認知症支援ナース育成研修」第1回を平成30年9月6~7日に開催しました。初日早朝に「北海道胆振東部地震」が発生したため、予定していたプログラム構成及び講師を急遽変更した上での開催となりました。
 当研修は、平成28年度の診療報酬改定で新設された「認知症ケア加算2」の施設基準である「適切な研修」の指定を受けており、認知症ケア加算2の算定条件を満たす9時間以上の研修参加を無事クリアすることができ、72人の受講者全員に修了証書を交付できました。

 プログラムは2日間の日程で、1日目は済生会兵庫県病院認知症看護認定看護師・谷川典子氏(「認知症ケア加算」「急性期病院での認知症看護の視点」)、谷川氏と済生会吹田病院認知症看護認定看護師・市村恵氏(「入院中の認知症患者に対する看護に必要なアセスメントと援助技術」)、済生会横浜市東部病院の老人看護専門看護師・丸山理恵氏(「認知症に特有な倫理課題と意思決定支援」)から講義いただきました。

 2日目は、済生会富山病院認知症看護認定看護師・橋本佳子氏と済生会金沢病院認知症看護認定看護師・松田美紀氏(「認知症患者とのコミュニケーション方法」、「療養環境の調整方法」)、済生会横浜市東部病院神経内科部長・後藤淳医師(「せん妄について」「認知症の原因疾患と病態・治療」「認知症の行動・心理症状について」)の講義に続き、グループワークを行い、認知症患者の看護・コミュニケーション方法について再認識することができました。
 今年度は2回開催で、第2回は10月9~10日に72名が参加予定です。今年度の修了予定者は144名で、平成28年度から今年度まで修了した延べ人数は697名となる予定です。

看護師長研修

 平成30年度看護師長研修を9月10~12日に本部で開催し、79名が参加しました。

 1日目は、炭谷理事長の基調講演に続き、済生会川口総合病院看護部長・名古屋恵子氏から「看護部長のマネジメント―キラッと輝く看護師長―」と題し、川口総合病院で導入している看護体制の事例をもとに講義いただきました。また、昨年から情報交換の時間を設けており、日頃の悩みを共有し、自施設を振り返ることができる時間となりました。
 2日目は中京大学法科大学院教授・稲葉一人氏の講義「看護倫理と臨床倫理」に続き、高輪心理臨床研究所主宰・岸良範氏による「人間関係とリーダーシップー互いに育てあう職場を目指してー」と題する講義と演習(グループワーク)を行いました。
 3日目は、社会保険労務士法人あい事務所代表社員(所長)・福島紀夫氏(「医療従事者の管理職がおさえるべきこれからの『働き方』と『ハラスメント対策』」)、済生会川口看護専門学校副学校長・櫻井靖子氏と静岡済生会看護専門学校副学校長・吉澤加代子氏(「看護師養成所の現状と課題―就職後の支援―」)の講義いただき、有意義な研修とすることができました。

済生会総研から ―編集後記―

 近頃、肌寒さを感じる朝もあり、秋の深まりを少しずつ実感しています。
 さて、今号(Vol.16)の研究部門では、松原了所長代理より「専門医制度」について、執筆をいただきました。特に、専門医制度を進めるにあたって重要な必要条件として「専門性の認定の客観化」と「専門医へのアクセシビリティ」の2つの観点から論考していただきました。「専門医へのアクセシビリティ」について、患者側にとっては、いかに専門医に到達でき、満足のいく医療や治療が受けられるかは非常に重要なことだと思いました。
 人材開発部門では「アドバンス・マネジメント研修」、「福祉施設リーダー研修」、「認知症支援ナース育成研修」、「看護師長研修」の4つの研修報告をしていただきました。
 このように、済生会の組織内で定期的な研修会が開催されることに加え、それを機に横の繋がりが構築できることは、済生会の強みの一つであると改めて思いました。
 これからも済生会人として、済生会で働いていることに誇りを持って、日々精進をしていきたいと思います。

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済生会総研の視点・論点 済生会総研 所長 炭谷 茂
第14回 日本の社会保障の制度疲労

 消費税の10%への引き上げまで1年余となった。
 医療機関にとって控除対象外消費税による負担の増大が、大変心配される。十分に補填されないと、医療機関は、経営の危機に瀕することは日の目を見るより明らかだ。
消費税の引き上げは、個人消費支出が伸び悩んでいる現状では、日本経済に大きな影響を与える。しかし、日本の財政構造,なかんずく社会保障費の増加に対処するためには、消費税の引き上げは、避けられないのだろう。
 問題は、国民が負担する税や保険料が公正かつ効率的効果的に使用されているかにある。今後消費税の引き上げが、予想されているが、厳しく現在の社会保障制度に問題がないのか問われる。
 最近、某全国紙で政権の助言者を務める経済学者は、「最低限度の生活を保障することが国の役割で、それ以上は資本主義国家なのだから、自分でがんばれというのが原則だ」と述べている。アメリカ型の社会保障が望ましいという考え方である。
 しかし、日本では所得格差、資産格差、情報格差、教育格差、健康格差などいろいろな面で格差が拡大している状況では、これからの社会保障は、もっと積極的に国民の生活を安定・向上に貢献していかねばならない。社会保障の役割は、むしろ増大していく。
 この観点からみると、日本の社会保障は、制度疲労をたくさん抱えている。大胆に改革しなければ、国民の生活の安定に貢献できず、国民の信頼感をなくす。不安を感じた個人は、将来に備えて貯蓄を増やしていくと、個人消費が減少する一方、自助では対応できない生活困窮者が増加し、日本経済に大きな打撃となって返ってくる。国民は、税や保険料を負担する意欲を失っていく。
 現行の社会保障制度の問題を紙面の関係で一つだけ挙げると、先進国の中で突出して、制度が乱立、細分化、縦割りであるうえ、経営主体が、非常に多数に分かれていることである。
 このため受給者間の不公平、非効率な運営、財政基盤の不安定という問題が生じている。人件費や電算処理費など事務経費も膨大に要する。事務経費は、節減して財源を給付に回すべきだ。制度が複雑化したため、国民にとって理解が、困難になったこと、制度間の谷間に落ちる人が多数存在していること、仕事や住所を変更する度に要する手続きが煩瑣なことなど問題を挙げれば、際限がない。
 反対に、良い面は、ほとんど見つからない。
 明治時代に社会保障制度が発足して以来、パッチワーク的に制度が積み重ねられてきた。政治家や行政官がその時点で適当な欧米の制度を、既存の制度を温存したまま、導入してきた結果である。日本の社会保障制度は、原点からの大胆な改革が急務である。

研究部門 済生会総研 研究部門長 山口 直人

済生会病院医師の働き方の実態と今後の在り方に関する研究

 済生会総研では、本年度、済生会病院の全医師を対象とした標記の調査研究を実施しますので、今回は、その概要を紹介します。

〇 医師の働き方をめぐる動向

 過労自殺の事例などがきっかけとなって、労働時間規制を強化する法律が先の国会で成立しました。病院の勤務医も労働者ですから、これらの法律が適用されますが、医師については法律適用までに猶予期間が設けられました。地域医療への影響など、大きな課題が存在することがその背景にあります。
 医師は、医療チームの中心として、個々の患者にとって最良の医療の提供を目指します。医師は他の職種にはない大きな裁量権が与えられていますが、その裁量権を適切に生かしていくためには、日々の絶え間ない研鑽が必要です。一生が研鑽の毎日と言えます。また、医師法19条では、「診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」という応招義務が定められていますが、そのような義務の有無にかかわらず、医師は患者のニーズに最大限に応えることを使命と考えます。さらに、医師は、患者に思いやりを持って優しく接して医療を提供する立場にあり、まさに接客業と同様の「感情労働」を日々行っています。このように、医師の仕事は、長時間労働の有無にかかわりなく、心身に大きな負荷のかかる仕事です。そして、このような仕事を満足の行く形で遂行していくためには、どうしても長時間労働になりがちで、それがさらに、心身の負荷を増強します。
 医師の仕事が高負荷であることはやむを得ないと考えられてきたのは事実ですが、過労自殺などの形で医師の過重労働が問題となり、看過できない状況にあると認識されるようになりました。厚生労働省は「医師の働き方改革に関する検討会」を設置して、医師の働き方改革の方向性に関する議論を開始し、本年2月には「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」を公表しました。また、日本医師会も「医師の働き方検討委員会」を設置して、「医師の勤務環境改善のための具体的方策-地域医療体制を踏まえた勤務医の健康確保策を中心に-」という答申を出しました。そこでは、医師の健康を守る対策と地域医療を守る対策のバランスの重要性が強調されています。済生会病院のみならず我が国の全ての病院にとって、これは新しい問題であり、様々な困難がある中で、全ての関係者が英知を結集し、対策を練って行動に移していくことが求められています。

〇 医師の働き方改革の課題

 医師の労働環境が問題視されるようになった当初、医師を労働者呼ばわりするとは何事か!といった反応も見られましたが、事業者である開設者と雇用契約を結んで勤務している以上は、初期臨床研修医も含めて労働者であると最高裁判決などで明確に示されています。労働者を保護する法律として、労働基準法、労働安全衛生法などがあり、勤務医についても、これらの法律が適用されます。労働基準監督署の指導、是正勧告が医療界全体で注目されていますが、これは労働基準行政に基づくものです。一方、我が国の医療は国民皆保険を基本とし、医療法などによって医療のありようが決められています。さらに、医師法によって応招義務も定められていて、適切な医療の提供が求められています。これらは労働基準行政に対して医療行政上の問題です。このような医療の特殊事情を勘案した上で、医師の働き方を考えていく必要があります。
 例えば、宿日直の問題があります。宿日直は、労働基準法41条に定められていて、「常態としてほとんど労働する必要のない勤務」であって、労働基準監督署の許可を得ている場合をいいます。許可基準には、宿日直手当の支給や、頻度(宿直は週1回まで、日直は月1回まで)も定められています。しかし、病院の中には、宿日直として勤務する医師が救急患者の診療などを行っている場合があり、制度上の見直しが求められています。
 また、「自己研鑽」の取り扱いも大きな問題となっています。労働基準法では、労働時間は「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」と定められています。また、使用者の指揮命令下にあるか否かは、明示的なものである必要はなく、黙示の場合も含むとされています。そこで、自己研鑽が大きな問題となります。医師は、その時点で許容される水準の医療を提供することを義務づけられており、そのためには、例えば、診療ガイドラインを学ぶなどの研鑽が求められますが、これは労働時間なのか労働時間外なのか、医療界でのコンセンサスが求められます。
 このように、これまでは医療の特殊事情として触れられてこなかった問題が取り上げられるようになってきました。

〇 研究の概要

 済生会は80の病院を擁し、4,300名の常勤医師が働いています。常勤医師は、初期臨床研修医から病院長にいたるまで、済生会で働くことに誇りを持ち、最良の医療の提供を目指しています。済生会の各病院は、それぞれの病院の特性に配慮しつつ、上述したような課題を解決していく必要があります。ただし、病院の業務は複雑であり、様々な影響を考慮しつつ実効性のある対策を進めていく必要があります。そのためには、根拠となるデータが不可欠ですが、済生会医師の働き方の実態については信頼性のあるデータが乏しいのが現状です。また、済生会医師が自らの働き方について、どのような考え方、希望を持っているかも明らかにしなくてはなりません。
 そこで、済生会総研では、「済生会医師の働き方の実態と今後の在り方に関する研究」を実施することになりました。研究は済生会総研が実施しますが、この問題に造詣の深い2名の顧問、8名のワーキンググルプメンバーに参画していただき、研究計画の策定から結果の評価までを担当してもらいます。
 研究の中核として自記式質問紙調査を実施しますが、施設調査と医師調査の2種類で構成されています。
 施設調査では、各病院における医師の働き方の実態と取組について病院長に回答をお願いします。内容は、医師の勤務体制、医師の労働時間の把握状況、宿日直・時間外勤務の状況、職員の健康管理体制などをお伺いします。
 医師調査は無記名調査で、済生会病院の全常勤医師が対象となります。初期臨床研修医、後期研修医も対象です。調査では、性別、年齢、診療科などの基本情報、病院での滞在時間、時間外勤務の状況、日常の活動の詳細、労働時間規制に対する考え方などを質問します。
 施設調査、医師調査のデータは統計的に分析して、以下の諸点を明らかにします;

(1)病院の勤務医の労働時間を適正に把握するための方法を検討すること

(2)(1)において最適とされた方法を病院に導入した際に把握される勤務医の労働時間の実態を分析すること

(3)勤務医の過重労働を防止し、勤務医の健康を守りつつ、医療の質を担保し、地域医療を提供するための方策を検討すること

(4)このような方策が、地域医療、地域包括ケアに及ぼす影響について考察すること

 この研究は、済生会病院が抱える問題を明らかにすることが目的ではありません。済生会病院に限らず、我が国のすべての病院において、医師の働き方改革は緒に就いたばかりです。この研究は、済生会病院における医師の勤務環境を我が国で最良のものとすることで、ひとりでも多くの医師が健康に留意しつつ済生会病院で活躍し、我が国の医療の範を示せる状況を作り出すことです。

 調査へのご協力をよろしくお願いいたします。

人材開発部門

コンプライアンス研修

 第8回コンプライアンス研修を7月27日、本部で開催しました。支部内部管理体制の基本方針にも関係することから支部職員も対象としており、施設長等が務める副法令遵守責任者と合わせ計67人が参加されました。

 本会法令遵守責任者である松原了理事が「一人ひとりが今日から意識を変えるつもりで受講していただきたい」と開講の挨拶をされました。炭谷茂理事長は基調説明で「『済生会ブランド』形成に当たっては、いわば最低必要条件」とコンプライアンスの徹底を呼び掛けられました。
 その後、OBS ビジコン代表(元日本総合研究所主席研究員)の大林正幸講師から、上級管理者の役割や管理体制の整備についての講義がありました。個別事例研究では「内部統制が機能しない組織が招いた不祥事」を例に参加者同士で意見交換をすることで、コンプライアンスへの理解をより深めることができました。

福祉施設リーダー研修

 福祉施設リーダー研修を7月30~31日に本部で開催しました。6年目となる今回の研修は、豪雨災害で広島の2施設が不参加になる等、定員24人に対し19人と少数での研修となりました。

 始めに炭谷理事長の講演「済生会の福祉事業~社会の期待に応える~」があり、「障害者の社会参加や刑余者の社会復帰等に加え、独居高齢者・児童虐待の増加など新しい問題が出現している。こうした問題に対処すべき済生会の役割は大きく、「攻めの姿勢」で福祉事業を進め確固たる地位を固めたい」との方針を示されました。
 その後は外部の専門講師による研修となり、「自分たちが目指す済生会グループの施設のあり方」と「現状における問題点」について、グループ毎に活発な意見を出し合いました。続いて、主体性を発揮するため「出来事の捉え方」の演習を行ないました。自らの「思い込み」を知って納得する他の捉え方ができれば、様々な出来事が自己成長につながる。それを実感することで自律的・自発的な行動が生まれて人間力が高まり、職場での人間関係をはじめ人生までもが豊かに楽しく充実したものになることを学びました。最後に、ゲームを用いてリーダーの指示の出し方を実践しました。
 当研修は年2回の開催でしたが、今年度は3回開催することとしており、9月4~5日(東京)、10月16~17日(岡山)にも開催する予定です。

済生会総研から ―編集雑記―

 この夏は、日本各地で40度を超す日もあり、生活がしづらくなるほど全般的に暑かったように思います。そんな中、最近出席したとある会議で、北海道からの参加者の話に驚きました。「この夏、何回か30度を超えてしまい、もともとクーラーがない地域なので困りました」「今は20度くらいに落ち着いていて、Tシャツ1枚だと寒い感じです」…やはり日本は広いなと改めて感じました。「地域性」を頭に置きつつ、研究も進めていきたいと思います。

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