済生会保健・医療・福祉総合研究所
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次の100年へ、先人の想いをつなぐ
一人ひとりの幸せを守るために

済生会は「社会の最終ライン」を守るという気概を持って、3つの基本的使命(生活困窮者への支援、地域医療への貢献、総合的な医療と福祉サービスの提供)を遂行していきます。

済生会は、明治天皇による「済生勅語」によって設立され、「施薬救療の精神」に基づく生活困窮者の救済を使命としています。生活困窮者を救済するための社会保障制度が整う今日においても、現実的には、救済しきれない新たな複雑化した問題を抱える生活困窮者は存在しており、更にはその存在自体が埋もれている生活困窮者も存在しています。
そのような環境下においてこそ、本会は3つの基本的使命を、時代の変化を踏まえながら的確に果たし続けていく必要があります。しかしながら使命を果たすためには、経営基盤を安定させる必要があり、両者を両立させるための研究と両者の両立を支える人材の確保・育成が急務となっているのです。

済生会総研News Vol.11

済生会総研の視点・論点 済生会総研 所長 炭谷 茂
第10回 働き方改革法案の歴史的コンテクスト

 政府は、4月6日、今国会の最重要法案に位置付けている働き方改革関連法案を国会に提出したが、今後審議が行われる。
 政府は、当初2月中の提案を目指していたが、裁量労働制の対象業務拡大の検討の基礎になったデータの信頼性に疑問が持たれたこと、東京労働局長の記者会見での発言が物議を醸しだしたことなどで1月以上遅れた。さらに現在国会情勢が混乱しており、今国会での成立の行方は、本稿執筆時(4月20日)では不透明である。
 しかし、この働き方改革関連法案は、戦後日本の民主化推進の柱として制定された労働基準法など労働法体系を抜本的に改め、今後の日本の経済、社会、国民生活を大きく変革していく。医療や福祉分野も例外でない。医療、福祉事業に従事する者は、法案の内容を十分に理解しなければならない。
 例えば残業時間の上限規制である。原則月45時間、年360時間までとされ、罰則が付せられる。ただし医師の適用は、5年間猶予されるが、医療現場や人手不足の現状などをかんがみると、特別の取り組みが迫られる。また、同一労働同一賃金の義務化は、非正規雇用が多い職場での対応が求められる。
 四病院団体協議会は、医師の働き方について検討を行い、「現行の労働法制とは異なる独自の医師労働法制を制定する」などの要望書をまとめ、先ごろ厚生労働省に提出している。
 メディアでの報道は少ないが、雇用対策法の改正に盛り込まれた女性の就労促進、保育や介護施策の充実、患者の就労援助など今日ニーズが高まっている分野の政策の促進も注目しなければならない。
 ところで今回の働き方改革関連法案は、次に掲げるような背景があるという巨視的な歴史的コンテクストで考察しなければならない。
 第1に、超高齢社会の本格化、生産年齢人口の減少である。これを対処するためには高齢者、障害者等多様な人の就労促進が求められる。
 第2に、グローバル化の進展により国際競争の激化である。日本の労働生産性は、欧米諸国に比べて著しく低い。生産性の低い産業分野が残されている。
 第3に、国民の人生観、職業観の変化とそれに伴う働き方の変化である。男性が終身雇用で会社に働き、女性が家庭で専業主婦という戦後からの日本の典型的な家族形態は、崩壊した。女性の社会進出が一般化し、労働移動、自由な勤務形態が増加している。
 いずれにしろ働き方改革は、多様性を有するすべての人が生きがいを感じて働くことができる社会の実現に寄与しなければならない。

研究部門

平成30年度診療報酬改定・DPCの影響について(包括点数・機能評価係数Ⅱ等)

 平成30年度の診療報酬改定は、6年に1度の診療報酬・介護報酬の同時改定となりました。団塊の世代が75歳を超え、国民の5分の1が75歳以上となる2025年問題に向けて大きな節目となる改定です。
 厚生労働省の公表では、全体▲1.19%で内訳として診療報酬本体 +0.55%(医科 +0.63%・歯科 +0.69%・ 調剤 +0.19%)、薬価 ▲1.65%(実勢価等改定 ▲1.36%・薬価制度の抜本改革 ▲0.29%)、材料価格 ▲0.09%となっています。
 すでに診療報酬改定による影響率を算出している病院もあるかと思いますが、今回は、済生会の経営情報システムのデータから、済生会病院のDPC請求の改定による影響を調査いたしましたので、その結果を報告します。

1. DPC包括点数(入院日数を含めての試算)(図①DPC包括置換)
DPC包括点数を置換して改定率を算出しました。調査対象病院は、平成28年度DPC病院54病院で、平成29年4月~10月までの期間の退院患者(6カ月間)約14万件のデータを置換対象としました。詳細な条件は次の通りです。
 ・DPC請求の適応患者
 ・入院年月日が平成28年4月1日以降の患者
 ・再入院患者は除外
 ・改定前、改定後の入院期間Ⅲの日数の差が生じていない診断群分類の患者
 ・改定前の入院期間Ⅲを超えた患者は、除外
 ・再入院で診断群分類を継続した患者は、除外
置換計算の結果は、済生会病院の包括部分の置換で点数合計比、▲0.57%でした。
プラスとなった病院は5病院、マイナスになった病院は49病院で、大半の病院が下がっています。DPCの包括点数内の薬剤・材料の引き下げが影響の原因になっているものと考えられます。

2. 基礎係数・機能評価係数II (図②基礎係数・機能評価係数II)
今回の改定により、暫定調整係数は廃止され、機能評価係数IIは、評価項目が8項目から6項目になり、基礎係数の点数変更がありました。
改定前の暫定調整係数・機能評価係数II・基礎係数の合計と、改定後の機能評価係数II・基礎係数の合計の平均の比較をしました。
その結果、係数が+0.0103でした。
プラスとなった病院は47病院、マイナスになった病院は7病院でした。

3. DPC包括点数と基礎係数・機能評価係数を組み合わせての試算
病院ごとにDPC包括点数影響と基礎係数・暫定調整係数・機能評価係数IIを組み合わせて診療報酬改定の影響率を試算しました。影響率の算出の計算式は次の通りです。
(改定後包括点数【置換計算】×改定後係数(機能評価係数II+基礎係数))
/(改定前包括点数×改定前係数(暫定調整係数+機能評価係数II+基礎係数))×100-1
その結果、診療報酬改定の影響率は+0.49%でした。
プラスとなった病院は34病院、マイナスになった病院は20病院でした。

 今回の改定は、プラス改定ですが、内訳を見ると、DPCの包括点数は下がり、DPC機能評価係数II等の係数が上がっている傾向であり、全体集計では、プラス改定ではあるものの、マイナスに転じている病院もありました。なお、部分的な試算ではありますが、全体の影響率の平均は、厚生労働省が提示した改定率よりも下回った結果となりました。この結果を踏まえ、各病院における係数アップのための対応は、これまで以上に重要になるものと考えます。

人材開発部門

平成30年度の人材開発については、以下の分野ごとに各種研修等を計画しています。

医師・事務等分野

 医師・事務等分野においては、以下のような各種研修等を予定しています。人事交流制度等の今後の展開については、人材開発ワ-キンググループ等の場において検討を進めていきます。
 医師臨床研修
 ・指導医講習会ワークショップ(6/23-24 大阪梅田、9/29-30 千葉幕張)
 ・次世代指導者研修(11/23-25 東京)
 ・臨床研修管理担当者研修会(2/23 富山) 等
 事務等
 ・医療技術者マネジメント研修(未定)
 ・薬剤部(科・局)長研修会(12/14-15 本部)
 ・次世代幹部研修(未定) 等

看護分野

 看護分野では「全国済生会看護職員教育体系」に基づき今年度も各種研修を行います。
さっそく看護部長・副学校長研修(H30.4.19-20)を開催しましたので以下に報告します。

「新任16人を迎え看護部長・副学校長研修」
 4月19~20日、看護部長・副学校長88人が出席し本部で開催しました。1日目は厚生労働省医政局看護課の島田陽子課長から「看護の動向」について講演いただき、看護師の特定行為研修の全国指定研修機関の説明等を受けました。
新任16人を迎え看護部長・副学校長研修 続いて、平成29年度副看護部長フォローアップ研修における受賞者の成果発表を行いました。「済生会虹の架け橋賞」(下関総合病院副看護部長・亀永百合子氏)、「チームでやり遂げたで賞」(山形済生病院副看護部長・阿部克子氏、新潟第二病院副看護部長・佐藤志津子氏)、「済生会ブランド企画賞」(野江病院副看護部長・柏井満希子氏、兵庫県病院副看護部長・堀川葉弥子氏)、「済生会虹の架け橋賞」(下関総合病院看護部長・藤田恵氏)からそれぞれ発表いただきました。
 午後からは、高輪心理臨床研究所主宰の岸良範氏の講義「人間関係とリーダーシップ―豊かにはたらくために―」とグループワークが、2日目には中京大学法科大学院の稲葉一人教授から「臨床倫理の基礎 事例検討会 意思決定支援 院内で実現するために」の講演があり、大変有意義な研修となりました。

社会福祉・地域包括ケア分野

 社会福祉・地域包括ケア分野においては、生活困窮者支援や総合的な医療と福祉サービスの提供を担う人材の育成に向け、以下の研修を行います。
 ・ 福祉施設リーダー研修(7/30-31 東京、9/4-5東京、10/16-17岡山)
 ・ 済生会地域包括ケア連携士養成研修(11/12-15 東京)
 ・ MSW研修会・生活困窮者支援研修会(3/12-13 東京)

済生会総研から

 今回の総研Newsは、研究部門から診療報酬改定の試算(DPC部分)を掲載しました。
 各病院においては、診療報酬改定への対応(改定点の理解、院内周知、改定前後の影響調査、施設基準の届出等)の作業が一通り終わり、改定後初の診療報酬請求を残すばかりとなっているものと思います。
 改定作業で活躍していた人もあと一息で通常業務に戻れるものと思います。
 周りを見渡すと若葉のまぶしい季節になりました、ぜひとも次の活躍に向けてリフレッシュしていただきたいと思います。

済生会総研News vol.10はこちらから

済生会総研の視点・論点 済生会総研 所長 炭谷 茂
第9回 新しい貧困の認識

 最近、日本の貧困の様相が構造的な変化を示してきたと感じる。これが日本の経済や社会に継続的な影響を与え、日本が、修復困難な問題を内包することになる。しかし、現在の日本人は、貧困に対する関心が薄い。政治や行政も危機感が乏しい。
 国民の大半は、貧困を「食べるのにもこと欠く生活水準」と考えている。日本人が貧困としてまず連想するのは、アフリカの飢餓状態の人々で、自分たちには無関係であると考える。絶対的貧困と呼ばれ、19世紀までの先進国の考えだった。
 その後経済の発展等に伴い国民の考えは、変化してきた。一方、ブース、ラウントリー、タウンゼント、ギデンズといったイギリスを中心に研究者は、実証的研究をもとに貧困の本質を明らかにし、世界の貧困対策に大きな影響を与えた。学問が、政治に決定的な影響を与えた典型例である。
 現在の世界の貧困の考えは、社会の一員として他人と付き合いながら生活できる水準を下回る状態であるとされる。これは相対的水準と呼ばれ、先進国で定着している。日本の生活保護制度もこの考え方に基づき水準が算出されるので、国民の平均消費支出の増加に比例して引き上げられて来た。
 貧困層を形成する人は、時代の流れに従い、変化してきた。終戦直後は、海外からの引揚者、産業基盤の壊滅による失業者などである。経済の復興によってこれらの者は、減少する。障害者や病気の人や景気の変動による失業者が貧困層を占めていく。今日では超高齢社会に入って高齢者が貧困層の大宗を占める時代に入った。
 これが現在の日本の行政や研究者の共通理解であるが、大きな見落としがないだろうか。
 まず非正規雇用者の増加である。給料が低水準の状態で生涯を過ごす。これらの者は、企業や地域などのつながりが脆弱で、社会から排除され、孤立している。年金、住居などの社会保障制度の仕組みは、全く未整備の状態である。高齢になったときの生活が懸念される。
 母子家庭の母、ニートなども同様な状態に置かれているのが日本社会の現状である。
 1980年代に欧米で「新しい貧困の出現」が指摘されたが、現在の日本社会は、もっと深刻な別の形態の「新しい貧困」が出現している。
 生活困窮者対策に取り組む済生会は、これを明確に把握し、社会に警告を発することが求められている。

研究部門

平成30年度の研究実施計画について

● はじめに
平成30年2月1日に第1回研究評価委員会が開催され、済生会総研の研究活動について評価を受け、平成30年度研究実施計画に対する御意見を頂きました。また、2月1日から、吉田護昭研究員が新たに加わり、福祉分野を担当することになりました。
● テーマ別研究課題
テーマ別研究課題は継続6課題、新規3課題の計9課題を設定しました。課題名一覧を表1に
示します。

表1 テーマ別研究課題

研究番号 分野 研究テーマ 新規/継続
テーマ1 医療 DPCデータの利活用を目指した効果的な分析手法の開発と展開 継続
テーマ2 医療 済生会の病院のDPC 機能評価係数Ⅱの現状とその課題 継続
テーマ3 医療 電子レセプトデータを使用した病院の経営改善に向けた取り組み 新規
テーマ4 医療/福祉 医療・福祉の質指標の整備と分析評価、活用に関する研究 新規
テーマ5 福祉 なでしこプランの展開と課題
―地域の特性に応じた各地の取り組みから―
継続
テーマ6 福祉 生活困窮者の就労支援における現状と課題
―刑余者支援に関する済生会モデルの構築と展開―
継続
テーマ7 福祉 済生会独自の地域包括ケアモデルの確立に向けて
―地域での暮らしを支えるためのまちづくり―
継続
テーマ8 福祉 済生会DCATの取り組みにおける現状と課題
―組織化と派遣職員へのサポート―
継続
テーマ9 福祉 障害者入所施設におけるソーシャルワークの現状と課題 ―済生会5施設のソーシャルワーカーからの聞き取りを通して考える― 新規

● 海外に向けた情報発信の推進
第2期中期事業計画の中で、海外に向けたSAISEIKAIブランドの情報発信を済生会総研が担当することになりました。平成30年度には、海外において保健・医療・福祉を総合的に提供する組織、事例に関して、研究論文、報告書等による情報収集を進めます。また、済生会の活動、済生会総研の研究成果などをSAISEIKAIブランドとして海外に発信します。平成30年度は、インターネット上で英語による情報発信を開始します。さらに、保健・医療・福祉に関する国際学会において、情報収集を行うとともに、済生会に関する学会発表等によって情報発信を行っていきます。

● おわりに
済生会総研は、実践的な研究を目指し、保健、医療、福祉を担う済生会施設の活動の支援を目指していきます。済生会内外の施設との研究ネットワークを構築して共同研究を推進しますので、引き続き済生会総研へのご支援をよろしくお願いします。

 

人材開発部門

次世代事務部門経営責任者養成研修(略称:次世代幹部研修)

 支部・病院・福祉施設の事務職員30名が参加し、3月13日に本部会議室で開催されました。
 この研修は、将来、事務部長や福祉施設長等になることが期待される事務職員を対象とし、済生会理念の理解や内部統制・マネジメント能力を身に着けてもらうため、病院長会や事務(部)長会の協力のもと、平成28年度から実施しています。

次世代事務部門経営責任者養成研修
次世代事務部門経営責任者養成研修 

 研修では、済生会の事務幹部職員に必要な知識や心構え等について炭谷 茂理事長、監査指導室(済生会本部)、園田 孝志院長(唐津病院)、 岩本 一壽支部長(岡山県済生会支部)による講義の後、グループワークを実施しました。
 グループワークでは、KJ法と呼ばれるブレインストーミング手法を用いて「済生会の事務職リーダーに求められるもの」をテーマに様々な意見を出し合いました。続いて、「事務職リーダーを育てるために必要なこと」について、各施設の取り組みや問題意識を共有した後、参加者は事務部長の視点に立ち課題の解決策やヒントを探り、グループ間および参加者全体でディスカッションを行いました。

 参加者からは「済生会職員であるプライド、自覚、誇りを持って仕事をしようと思う」といった感想が聞かれました。なお、当研修の修了者に対して、施設がスキルアップに必要な外部研修を受講させた場合、施設が負担した受講費用の一部に対して補助が行われます。

MSW研修会・生活困窮者支援事業研修会

MSW研修会・生活困窮者支援事業研修会 平成29年度MSW・生活困窮者支援事業研修会が3月14日と翌15日に開催され、MSWを中心に71人が参加しました。
 はじめに炭谷理事長による「済生会におけるMSW事業の理論と方法」と題した講演では、「済生会のMSWが日本のMSWをリードしてほしい」との強い期待が寄せられ、続く、川口総合病院の八木橋克美氏、みすみ病院の内田耕人氏、京都府病院の南本宜子氏の各MSWからは、施設における生活困窮者支援の活動状況が報告されました。

  2日目は、文京学院大学・中島修准教授による「地域におけるネットワークの構築について」と題した講演が行われ、国の政策の理解と地域におけるネットワーク構築の必要性について考えました。

 講演後には、1日目の活動状況報告と合わせ南本氏をコーディネーターとしてグループワークが行われ、「生活困窮者支援のネットワークづくり」をテーマに話し合いが行われました。参加者からは「活動報告が具体的で参考になった」「病院全体で地域に関わることが重要だと感じた」等の感想が寄せられました。
 また、1日目の研修終了後の情報交換会ではMSW同士の交流も図られ、昨年に引き続き、障害者の就労継続支援事業を行う熊本済生会ほほえみ「パン工房ふわり」のパウンドケーキや、松山ワークステーション「なでしこ」のクッキーなどがふるまわれました。

済生会総研から

来年度に向けて

これまで、「済生会総研News」を通して、総研の活動等を報告させて頂きました。また、2月の済生会学会では、これまでの研究活動の総まとめとして、各分野における活動報告や実践報告もさせて頂きました。
来年度は、これまで積み重ねてきた研究の『成果』、『結果』を出す1年であります。つまり、これまで総研が「現場の皆様にフィードバックする」と伝えてきたことを実現していかなければなりません。まさに、済生会総研が問われる1年だと思います。
今後も精進を重ねるとともに、新たな気持ちを持って、研究活動に邁進していきます。

済生会総研Newsバックナンバー

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